2021年中学入試はどう行われたか?(受験情報)ムーヴ編集部

2021/07/04
2021年中学入試はどう行われたか?
全体状況は?
●なぜ受験生は減らなかったのか?
コロナ禍で中学受験人口の減少が想定された中、実際には7年連続して増加した。<外的事情>と<内部事情>に分けて考察してみよう。

<外的事情>
○小6はすでに2 年なり、3 年なり塾に通ってお金をかけて来ている。それを今止めると、このお金が水泡に帰してしまう。
○何よりもわが子が2年、3年と勉強してきている姿を見ているわけで、それを止めさせることは親としてもしにくかった。
○休校期間中の公立小学校の対応。子どもは昼ぐらいまで寝ていて、やおら起き出して学校のホームページから指示されているもの、ドリルなどをやるだけ。こういう部分にも、公立中学に進んだら似たような状況になるのではないかという保護者の心配があった。
○最近の受験事情。
・公立中高一貫校 東京では都立○○高校附属中学という形の学校が5校あり、これが年度を追って高校募集を停止する。神奈川では川崎市立、千葉では千葉市立稲毛が高校募集を停止ないしいずれ止める。
・私立中学 本郷、豊島岡女子学園が高校募集を停止。
こうした状況を見て、中学から入れないとまずいだろうとう判断した保護者が多かった。
<内部事情>
○グローバル教育、STEAM教育、探究など、私立中高一貫校の教育内容を知り、無理してでも中高一貫教育を受けさせたいと考えた。
○HPで公開されている動画を見て、先生が生徒に愛情を持って接していることを感じ、生徒も実に楽しそうにやっていることを知った。
○学校説明会が大規模にできなかったため、各校とも少人数で行ったが、訪れたときのきめ細かな対応に感激したという保護者の声をよく聴いた。

3機関とも受験者数は増と推定
どのくらいの人が中学受験をしているか、という数字は実は公的な機関はどこも出していない(東京都教育委員会の場合は、小学6年生がどのような学校種<公立、国立、私立、公立中高一貫校>に進学したかという数字を12月ごろに公表)。で、中学受験者数は、大規模な模試を行っている会社がそれぞれに推定して出している。
〇首都圏模試 650名増で50050名
〇日能研 1700名増で61700名(公立中高一貫校を含む)
〇四谷大塚 500名増で52000名
いずれもが受験者数が増えたと計算している。首都圏ではおおよそ5~6人に1人が中学受験していることになる。

顕著な動向は?
次にどのような動向が見られたかを、さまざまな視点から上げてみよう。

①コロナの感染リスクを下げるための出願校数の減がさまざまなところに現れる
〇東京、神奈川の受験生が千葉を敬遠・・・市川①、渋谷幕張①、東邦大東邦前期すべて減
〇同一校での2回目、3回目の出願者数減
〇算数入試の出願者数減・・・攻玉社、巣鴨、世田谷学園、田園調布学園、湘南白百合、桜美林、都市大等々力ほか
②各都県で最難関校が敬遠される
〇立教新座① 、浦和明の星① 、淑徳与野① 、栄東①、開智先端①、東京&神奈川男子御三家すべて、早稲田、渋谷教育渋谷、洗足学園①など
 ⇒次のクラスにシフト
〇城北埼玉、星野学園、芝浦工大柏、専修大松戸、海城、駒場東邦、サレジオ学院、鎌倉学園、逗子開成、鷗友学園、大妻、晃華学園など
③学校種別応募者数の多かった学校
 (太字は前年より増加した学校)
○男子校 都市大付属、日大豊山、世田谷学園、城北埼玉、成城、本郷、早稲田、巣鴨、立教新座、海城、高輪、明大中野、獨協、浅野、芝、聖光学院、逗子開成、鎌倉学園
○女子校 豊島岡女子学園、山脇学園、浦和明の星、横浜女学院、大妻、淑徳与野、洗足学園、共立女子、実践女子学園、恵泉女学園、跡見学園、吉祥女子、昭和女子大附、東京女学館
○共学校 栄東、開智、広尾学園小石川、広尾学園、東邦大東邦、大宮開成、星野学園、市川、専修大松戸、開智日本橋、埼玉栄、三田国際、山手学院、青稜、都市大等々力
④受験者数の増加率が高かった学校(受験者数500名以上)
○埼玉 開智未来、青学浦和ルーテル、星野学園、大妻嵐山、城北埼玉、昌平
○千葉 光英VERITAS、東海大浦安
○23区 獨協、実践女子学園、郁文館、芝浦工大附属、山脇学園、目黒日大、日大豊山、日大一、駒込、淑徳巣鴨、青稜、京華、日大豊山女子、桜丘、富士見、聖学院、鷗友学園
○多摩 晃華学園、明治学院、東京電機大学、日大三
○神奈川 カリタス女子、桐蔭学園、神奈川大附属、サレジオ学院、山手学院、自修館
⑤難関大の付属校志向に急ブレーキがかかる
有力大学の付属校・系属校について、受験者数の前年対比での増減を調べたところ
・早稲田系 早稲田、早稲田大学高等学院中学部、早稲田実業の3校すべてが前年より減
・立教系 立教池袋、立教新座、立教女学院、香蘭女学校の4校すべてが前年より減
・学習院系 学習院、学習院女子もともに減
・慶應系 慶應中等部だけが増で、慶應普通部、慶應湘南藤沢の2校は減
・明治系 明治大学付属中野だけが増で、明治大学付属明治、明治大学付属中野八王子の2校は減
・中央系と法政系は2校のうち1校が増。中央系は中央大学附属が減で、中央大学附属横浜が増、法政系は法政大学が増で、法政大学第二が減
・難関大学の付属校で唯一増加校の方が多かったのが青山学院系。青山学院と青山学院浦和ルーテルが増で、青山学院横浜英和が減
難関大学の付属校はこれほどまでに減らしている学校のほうが多かった。増加したのがわずか6校なのに対して減少したのは3倍近い16校も。
⑥中堅大学の付属校は増加
これらと実に対照的だったのが日本大学系。東京には日本大学系の付属校が6 校あるが、6 校すべてが増加。それも目黒日大が140%、日大豊山が137%、日大一が135%、日大豊山女子が125%、日大二が113%、日大三が111%と、すべてが前年の110%超え。
東海大学系は、東海大高輪台と東海大浦安が増で、東海大相模が減。そのほかでは、成城学園、成蹊、明治学院が増で、東洋大京北が減。
中堅大学の付属校は増加したところのほうが多くなっている。大学入試と同様な傾向がみられた。
⑦各都県で増加が目立ったエリア
〇埼玉 東武東上線…城北埼玉、城西川越、大妻嵐山、西武台新座、星野学園、細田学園
〇千葉 常磐線…光英VERITAS、芝浦工大柏、専修大松戸、麗澤
〇東京 下町から臨海部…高輪、中村、開智日本橋、かえつ有明、芝浦工大附、青稜、日大一、安田学園
文京区…京華、獨協、日大豊山、跡見学園、郁文館、駒込、広尾学園小石川
〇神奈川 横浜市郊外&周辺…サレジオ学院、逗子開成、清泉女学院、日本女子大附、神奈川大附、桐蔭学園、森村学園、山手学院
⑧「学力別コース制」を敬遠?
学力別コース制を取っている代表的な学校が押し並べて減だったことも特徴的。
都市大付、国学院久我山、淑徳、都市大等々力、八王子学園、日本大学など。
⑨伝統女子校が復活
跡見学園、大妻、実践女子学園、山脇学園など。
⑩小規模カトリック校が健闘
晃華学園、カリタス女子、聖セシリア女子、清泉女学院、聖園女学院など。
⑪公立中高一貫校 経済不況でも伸びず
公立中高一貫校は、この4月開校の川口市立高校附属を加えて23校あるが、うち増えたのは6校だけ。
桜修館中等教育、大泉高校附属、武蔵高校附属、平塚中等教育学校、横浜市立南、横浜市立サイエンスフロンティア。武蔵高校附属はほとんど横ばいなので、実質増えたのは5校のみ。経済不況でも公立中高一貫校は伸びなかった。小6になってから塾に通う層が減っているので、この分が減ったのか。
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