2018年度中学入試はどう行われた?(受験情報)安田教育研究所

2018/08/16
安田先生の「中学受験の見方&味方」

2018年度
中学入試はどう行われた?


、2018年度入試の全体状況です。
実は、首都圏では2015年度から4年連続で
中学受験者数は増加しています。
なぜ増えているのでしょう?
 最近の中学入試はどう変わっているのでしょう?
最近はどんな学校が人気なのでしょう? 
そうしたことを取り上げてみましょう。


全体状況は?

●神奈川以外の3都県はすべて受験者増
 どのくらいの人が中学受験をしているか、
という数字は実は公的な機関はどこも出していません
(東京の場合は、小学6年生がどのような学校種〈公立、国立、私立、公立中高一貫校〉に進学したかという数字を12月ごろに公表します)。
ですので、中学受験者数は、
大規模な模試を行っている会社がそれぞれに推定して出しています。
まずそれをご紹介しましょう。

<+の後の数字は前年対比の増加数です。>

・首都圏模試 +850名で45000名
・日能研 +300名で57300名(公立中高一貫校含む)
・四谷大塚 +1000名で48500名

 少しずつ違いますが、
首都圏ではおおよそ5~6人に1人が中学受験していることになります。
(東京の都心の区だと4割が受験しているようなところもあります)

 2018年度入試はWeb出願が一気に広まったため
応募者数はさほど増えていませんが、
受験率(出願した者のうち実際に受けた人の割合)は上昇したため、
受験者数は増えています。
都県別では、神奈川を除く1都3県で増えました。
 実は受験者増は2015年以降続いています。
大学入試改革がマスコミで盛んに取り上げられてわが子の将来に
関心を持つ層が増えたこと、
社会のグローバル化を見据え国際交流に力を入れている
私立に進ませたいと考える層が増えたことが、
大きな要因かと思います。

顕著な傾向は?

①ものすごい付属校旋風
 政府の地方創生政策の一環で、23区内の大学の定員の厳格化が進められ、
多くの大学が合格発表数を絞っています。
そのため2017年度大学入試では有力私大が軒並み狭き門になりました。
そうした厳しさが保護者に伝わり、
中学入試では付属校を選ぶご家庭が一段と増えました。

―point―
・早慶、MARCH、学習院系
・日大系も軒並み…他大学進学コースの設置
・東海大系も久しぶりに増(他、女子美術大学付属も)

〈男子校〉
 男子校は立教池袋がごくわずか減らした以外はすべて増加。
〈女子校〉
 女子校はそれほどでもなく、半数が増加、半数が減少。
〈共学校〉
 20校のうち16校は増。14校は男女とも増と、
共学の付属校は男女ともに人気であった。
 慶應系、中央系、法政系、明治系の各2校がそろって増であることが目立つ。
青山学院、千葉日大第一、中央大附(4年連続)、法政大学、
法政大第二、早稲田実業(4年連続)は3年連続で増。

②キリスト教女子校はプロテスタントが好調、カトリックが不振

・プロテスタント系
・・・ 闊達なイメージ
・カトリック系 ・・・・・・・ 厳格なイメージ

 実際は宗教色はプロテスタント系のほうが強いのですが、
保護者はプロテスタント系のほうに明るく元気なイメージを持っていて、
香蘭女学校、頌栄女子学院、女子学院、横浜女学院などは
前年を大きく上回りました。

③適性検査型入試が一段と増加

<入試回数激増で、学校差拡大>
模試代わりでなく入学しても良いところを選択
<受験者が多い学校ベスト10>
宝仙学園、安田学園、郁文館、浦和実業学園、聖徳学園、
西武学園文理、聖望学園、千葉明徳、共栄学園、駒込

④わが子がグローバル化社会に巣立つことを強く意識

・「英語力を伸ばしてくれる学校」が人気
・「帰国生が多い学校」が人気 ・・・ 国内生入試にも影響
・「多様な海外研修がある学校」が人気

⑤次の時代、次の大学入試を意識している保護者の増

<「思考力入試」「表現力入試」「総合入試」の受験者増>
 聖学院、大妻中野、共立女子、光塩女子学院、
大妻嵐山、かえつ有明、桜美林、麗澤など 
<女子校の「算数1科」に集まる>
品川女子学院、大妻中野など
<次の時代を見据えたコースの受験者増>
駒込「国際先進」、横浜女学院「国際教養」など

⑥そのほかの動向

<伝統校の午後入試に大勢詰めかける>
 実践女子学園、三輪田学園
<特待入試>
入試回数、受験者ともに増加
<先進特待、東大・医進、S特進、難関進学など
上位コースのほうが下位コースより受験者多数>
 高校入試との違い
<4科生の減少、2科生の増加>
通塾期間の短縮、チェーン塾、学習教室への通塾

2科4科以外の新しいタイプの入試が多数登場

 現在でも2科ないし4科の受験生が大半ですが、
近年、進学塾に通わないで受験するケース
(英語塾や理科実験教室には通っていたりする)、
また以前だったら受験態勢に入ると
稽古事やスポーツクラブを中断していたものが、
6年になっても継続するケースが増えています。
 そうした環境の変化は、入試方法の多様化にもつながっています。
入試科目も、2科・4科以外に「英語入試」「合科・総合型」
「思考力型」「自己アピール(表現)型」などさまざまなスタイルが
登場しています。
 入試名称となると、下記の表のように、
学校がそれぞれに思い思いの名称をつけています。

●2018年度入試で新設された入試(一部)
・跡見学園/Iクラス思考力入試
・実践女子学園/思考・表現入試
・女子美術大学付属/女子美 自己表現入試(作文と面談)
・白梅学園清修/『見方・考え方』表現入試(論述試験、口述試験)
・富士見丘/ICT型思考力入試
・貞静学園/個性発見型入試(プレゼンテーション発表)
・文化学園大学杉並/算数特別入試(算数、プレゼンテーション)と
英語特別入試(英語、プレゼンテーション)
・目白研心/英語スピーチ入試(英語スピーチ及びQ&A)
・千葉明徳/ルーブリック評価型入試
(プレゼンテーション、グループディスカッション)




こうした入試を採用している学校でも募集定員の多くは
2科・4科で採っていますので、
これまでの勉強で受けられなくなるわけではありません。
塾に通っていれば、それが活かせる入試を選べばいいのです。
むしろこれまで塾に通っていなかった。
お稽古事をしていて受験を意識していなかった。
そうした児童こそ新しいタイプにチャレンジすればいいでしょう。




安田先生のプロフィール
大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、教育書籍の企画・編集にあたる。
幼児部門から就職部門までの若手を集めた教育情報プロジェクトを主宰、
幅広く教育に関する調査・分析を行う。
同社を退社後、安田教育研究所を設立。
講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
日本経済新聞、朝日小学生新聞、「進学レーダー」、「ム~ヴオンライン」など
各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。

<<戻る