コース制は「学力別」 から「学習内容別」へ(受験情報)ムーブ編集部

2020/11/19
コース制は「学力別」 から「学習内容別」へ
コースを設ける学校は以前からありましたが、近年の特徴は従来からの「学力別」だけでなく「学習内容別」のコースを設けるケースが増えている点にあります。近年の「コース制」事情について取り上げましょう。最後に「コース」を選ぶ場合の注意点にも触れておきます。
「コース制」を設ける意味
 「コース制」は首都圏では埼玉から始まり、いまでは東京・神奈川・千葉の学校でも取り入れています。このようなコースを設置する狙いは、一般コース(名称は「総合コース」などいろいろ)とは別枠の少人数の募集をすることで、偏差値表の高いところに校名が載るようにすることにあります。そうすることで学力が高い層に受験、入学してもらおうということです。
 上位コースの入試の多くが、上位校と併願受験のしやすい「午後入試」になっているのもそのためです。ですから、入試自体を分けている学校の場合には、当然「コース」によって入試の難易度に違いが生まれます。
 「学力別コース」の上位コースは、難関大学合格を第一義に考えているので、入学後に大学受験を強く意識したカリキュラムで授業が進められます。将来は、難関大学に進ませたいから、中学のうちからわが子に効率よく勉強させたいと、「コース制」を選ぶ家庭が増えているのです。また、上位校に比べ少数精鋭の丁寧な指導が受けられたり、高得点で合格すると特待生となって授業料免除などの特典が受けられたりするので、その点に魅力を感じて受験する場合もあります。

学校選びと同じくらい「コース」選びも重要
 ただ「コース制」とひとくちに言っても学校によって違いが大きく、入学後は授業時間数から教材・講習まで別という学校もあれば、名称だけで実質的にはほとんど差がないという学校もあります。受験するにあたってはその学校の「コース制」はどのような
システムなのか、また中高6年間をコースの優秀な同級生たちと共に競い合っていく環境で、わが子が伸びるタイプかどうか、また子どもにハードなカリキュラムをこなすだけの覚悟があるかどうかを、見極める必要があるでしょう。ですから、学校選択と同じくらい慎重に「コース」選択をする必要があります。
■「学力別コース制」をとっている学校の例
京華…特別選抜、中高一貫
聖学院…アドバンスト、レギュラー
東京都市大学付属…Ⅱ類(最難関国公立大)、Ⅰ類(難関国公立私大)
国学院久我山(男子部)…ST選抜、一般
淑徳…S特進東大選抜、S特進
淑徳巣鴨…スーパー選抜、特進
東京都市大学等々力…S特選、特選
安田学園…先進、総合
鶴見大学附属…難関進学、進学
麗澤…アドバンスト叡智、エッセンシャル叡智
栄東…東大、難関大
西武学園文理…特選、一貫
女子校を中心に「グローバル」系コースが急増
「グローバル」系コースを設け、長期・短期の留学や多様な海外研修の機会を用意したりして、生徒に「グローバル社会」で生きる力をつけようと工夫している私立は女子校を中心にたくさんあります。そうした学校を挙げてみましょう。
明法…国際理解
大妻中野…グローバルリーダーズ
神田女学園…グローバル
麹町学園女子…グローバル
昭和女子大学附属昭和…グローバル留学
文京学院大学女子…グローバルスタディーズ
山脇学園…クロスカルチャー
和洋九段女子…グローバル
鎌倉女子大学…国際教養
横浜女学院…国際教養
郁文館…グローバルリーダー特進
開智日本橋学園…グローバル・リーディング
工学院大学附属…ハイブリッドインター
玉川学園…IB(国際バカロレア)
広尾か学園インターナショナル
三田国際学園…インターナショナル
昭和学院…IA(インターナショナルアカデミー)
 2021年度には男子校の佼成学園にグローバルコースが、江戸川女子に国際コースが、広尾学園小石川にインターナショナルコースが設けられます。

近年は「サイエンス」系コースの新設も
 ここへきて目立つのが「サイエンス」系コースの新設です。国としても「科学技術立国」を目指し、多くの理系人材が求められています。特に今回のコロナ禍の中で、先進国の中でデジタル化がもっとも遅れていることが明白となり、IT人材の養成は喫緊の課題となりました。
 そうした時代、社会の動きを先取りした形で私立中学の中には「サイエンス」系コースを設けるところが出てきているのです。
 2021年度に世田谷学園に理数コースが設けられます。
■「サイエンス」系コースのある学校の例
明法…サイエンスGE
工学院大学附属…ハイブリット特進理数
広尾学園…医進サイエンス
三田国際学園…メディカルサイエンステクノロジー
芝浦工業大学柏…グローバルサイエンス
埼玉栄…医学
「コース」をなくす動きも
このように「学力別」でも以前の「特進」と「総合」といったシンプルな名称からインパクトのある名称に変わったり、「学習内容別」では「グローバル」「インターナショナル」「国際」「サイエンス」「理数」を付したりと、「コース」も実に多彩になってきています。
 その一方で、少ないですが「コース」を廃止する動きも出てきています。
●大妻中野…「アドバンストコース」・「コアコース」→「アドバンストコース」に一本化。
●神田女学園…「グローバルコース」・「アドバンストコース」・「フューチャーコース」→「グローバルコース」に一本化。
●駒込…「国際先進コース」・「本科コース」→「国際先進コース」に一本化。
●光英VERITAS(現聖徳大学附属女子)…「S探究コース」・「LAコース」→「コース」を廃止。

「コース」を選ぶ場合の注意点
 いま囲碁でも将棋でも、楽器でも、フィギュアスケート・スケボーなどのスポーツでも、小さなうちから取り組み、才能を伸ばしているケースはごく普通にあります。英検などでも小学生が2級取得などという話を耳にしますし、ロボットの世界大会出場、プログラミングでアプリ開発などの例も頻繁にあります。
 ですから、早くからわが子に合った教育で才能を開花させたいという考え方もありだと思います。が、わが子の才能の見極めは実に難しいです。本人が本当に好きで、なおかつ才能もあるのか、親のそれとはなしの誘導でここまできているのか、小学生の段階では判断がつかないケースが多々あります。もちろん小学生の段階では神童でも、中高生になってみると平凡な才能という例もこれまた多々あります。
 そうしたレベルまでいかないまでも、小学生の時には英語好き、理科実験が好きといった子が、中学校で英語重視のカリキュラム、理数重視のカリキュラムが負担になったり、向いていないことに気がついたり、といったこともあります。小学校6年生段階での志望がそのままうまく軌道に乗るケースが多いのでしょうが、こんなはずではとなるケースもあるものです。
 学校もそうした外れるケースを経験してきているからなのでしょう。ここへきて受験段階ではコースを設けず、1年間学校生活を送ったうえで決めるというかたちにしている学校も出てきました。
●大妻多摩…中2から「国際進学クラス」を新設。
●文京学院大学女子…中1はファウンデーションステージとし、中2から「グローバル スタディーズ」「アドバンスト サイエンス」「スポーツ サイエンス」に分かれる
〈学習内容の違いによるコース〉も〈学力別コース〉と同様に、いやそれ以上に子どもをきちんと見つめることが大切だと思います。「コース」を選ぶ前にわか子を客観視することが必要ではないでしょうか。
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