ここに注目2021年度神奈川県高校入試(受験情報)ムーブ編集部

2020/10/05
ここに注目2021年度神奈川県高校入試


公立高校―学力検査の平均点は上昇
マークシートを一部導入4年めで平均点下降に歯止め
 2020年度は神奈川県ではマークシート方式を一部導入してから4年めの入試となった。
 2年連続で下降していた5科平均点合計は25.3点上がり288.3点だった。教科毎に見ると前年とアップダウンが逆になっているケースが多い。
 2年連続で下降していた国語が64.7点→73.1点→65.6点→59.1点→69.1点と上昇、5科中最も高くなった。前年、これまでの低さから急上昇した理科は46.5点→46.9点→45.3点→61.3点→55.9点と少し下がった。2年連続で下降し最も低かった社会は52.0点→54.5点→41.8点→42.5点→58.2点と大きく上昇した。数学も51.7点→63.5点→56.0点→50.3点→55.7点と2年連続ダウンから上昇。英語は43.0点→51.9点→56.1点→49.8点→49.4点と前年とほぼ同じで唯一50点を下回った。最も低い正答率でも10%を超え、最も高い正答率の小問でも80%を切っている。前年に続き正答率90%台と10%未満の小問が目立った数学と対照的だ。

コロナ休校への配慮による削除単元は少なめ
 神奈川県の公立高校入試の学力検査でも都立と同じようにコロナ休校への配慮として出題範囲から削減される単元が公表されている。しかし、国語では中3で習う漢字の読み書き、数学では資料の活用、英語では中3で習う英単語を問うもののみで、東京都や埼玉県に比べるとかなり限定されている。長文読解問題に欠かせない関係代名詞や数学の応用問題の頻出単元のひとつでもある三平方の定理も削除されないので、過去に出題された入試問題とそれほど大きく変わらない可能性が高い。
 また、多くの私立高校は県の公立高校の出題範囲に合わせ一部削除した出題になることが予想される。
  
特色検査の自己表現実施校、増加2年めへ
 特色検査を実施する高校では、特色検査の得点を100点満点か200点満点に換算し、1100点満点か1200点満点で判定する。特色検査でも学力向上進学重点校や難関校で主に実施されている自己表現検査は総合的な学力を判定する性質が強い。
 2020年度は特色検査の自己表現検査で共通問題・共通選択問題を導入して2年めになり、学力向上進学重点校やエントリー校で実施、記述型の自己表現検査実施校は11校から20校に増えた。3年前までは実施校で作成していた問題が共通・共通選択に変わったことで全体的には標準化し、2020年度はマークシート方式も導入された。実施校のうち、前年より応募者を増やしたのは7校に止まった。3年めとなる2021年度は反動で増加校が増える可能性もある。

おもな特色検査実施校
【記述型自己表現】
横浜翠嵐・湘南・柏陽・厚木・希望ケ丘・横須賀・平塚江南・横浜緑ケ丘・川和・多摩・光陵・横浜平沼・鎌倉・小田原・大和・相模原・茅ケ崎北陵(以上17校が共通問題・共通選択問題)
【グループ討論自己表現】
神奈川総合(国際文化コース)
【英問英答】
横浜国際(国際科・バカロレア)
私立高校―各校の合格基準変更に注意
書類選考・推薦入試で応募者増
 県全体の総応募者数は前年を下回ったものの推薦入試や書類選考の総応募者数は前年より増加した。書類選考の増加は少なめだが、それでも1万名を超えている。推薦入試の応募者数は5千名台で書類選考の半数に過ぎない。
 2020年度は男子校から共学化した横浜が応募者を前年の約3.6倍、約2,100名を集めた。国際教育の充実や施設の改築が人気に繋がり、男子を上回る数の女子が入学した。近隣の通学圏内の共学校の一部では女子の応募者の減少が見られた。2018年度に男女別学から共学化した桐蔭学園は基準を大幅に上げた前年に続き応募者を減らしたものの約3,000名を集め県内私立最多の応募者数を維持している。
 コロナウイルス禍での初めての入試となるが、「【東京】私立高校編」で触れたように、混雑した電車での通学を避け、自転車通学も可能な学校を選ぼうとする受験生が増えるかもしれない。電車で通学するにしても中心地より周辺部にある高校のほうが「密」を避けられると考える受験生や保護者もいることだろう。相鉄線とJRとの相互乗り入れによって通学圏は拡大しているのだが、コロナが収まるまでその影響は大きくならないかもしれない。
 大学入試制度の大幅な変更は先送りされたが、制度変更への不安感から大学付属校を希望する傾向は強い。2020年度は、日本大学、日本大学藤沢などが応募者を増やした。他の大学付属校では前年並みか応募者の減少も見られたものの難度は下がっていない。大学付属校人気は続きそうだ。

情報を集め、様々な入試スタイルの活用を
 東京と同様、神奈川の私立高校入試は1月22日の推薦入試からスタートする。第一志望者のみが対象だが、私立第一志望でも2月10日から開始する一般入試で受験するケースが少なくないのが神奈川の特徴だ。公立第一志望で私立を併願する場合も一般入試を受験することになる。
 より多くの受験生が応募できるように一般入試を複数回行う私立高校もある。志望順位によって基準は違うものの、神奈川では調査書点が合否を左右するケースが多い。また、調査書点に関係なく学力検査結果によって合格を出すオープン入試もある。オープン入試には特待生選抜を兼ねたものがあり、推薦や一般で合格を留保した上でチャレンジできる場合がある。一方、特待生選抜で一般枠でスライド合格を出すところもある。複数の学科やコースのある私立高校では、受験した学科では合格しなくても別の学科やコースでスライド合格を出すこともある。高校によって違うので情報収集が重要だ。

神奈川独特の書類選考型入試
 神奈川県内の私立高校では公立入試制度変更後、入試日程が限定されるようになったため、書類選考型入試が急増した。
 書類選考の最大の長所は面接等の試験を受けるために学校へ足を運ばなくてよいのと筆記試験がない、という点だろう。調査書点が合否を左右する傾向の強い神奈川ならではの入試システムといえる。
 2 0 1 8 年度に前年より2倍以上の応募者を集めた桐蔭学園で最も多かったのは書類選考だった。2 0 1 9 年度には向上が書類選考を導入し、2 0 2 0 年度も桐蔭学園に次いで多くの応募者を集めた。人気が急上昇した横浜で最も応募者を集めたのも書類選考だった。同校は入学生も多かったので、次年度は基準を上げる可能性が高いので注意が必要だ。
 コロナ禍で公立中学の成績の付け方が厳しくなるとは考えにくいことから、基準を下げる私立高校は少ないことが予想される。コロナの影響で例年より次年度入試についての各校の入試要項の公表が遅れているため、目安を持ちにくい状況だが、まず調査書点を上げることが大事だ。定期試験の得点や提出物の評価、授業態度など、少しでも改善できそうな点があれば前向きに取り組みたい。
 書類選考では一定の基準が求められるので利用できる受験生は限られる。また、公立中学校での調査書点のみで合格が決まるため、入学後の学力差が大きいことも考えられる。入学後の経過から基準の見直し等を検討する高校もあるのではないか。推薦も含め学力検査抜きの選抜が応募者を集める状況が続いているが、導入校の増加は一段落するかもしれない。

2021年度は変更点が少ない
 神奈川県では毎年のように、共学化や完全中高一貫校が高校募集を再開する動きが見られた。2 0 2 1 年度は珍しく各校の動きに変化が見られない。今年度、人気を集めた高校で基準を上げる可能性はあるが、全体的には今年とそう大きく変わらない入試状況になりそうだ。
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