書類選考・推薦入試で応募者増
県全体の総応募者数は前年を下回ったものの推薦入試や書類選考の総応募者数は前年より増加した。書類選考の増加は少なめだが、それでも1万名を超えている。推薦入試の応募者数は5千名台で書類選考の半数に過ぎない。
2020年度は男子校から共学化した横浜が応募者を前年の約3.6倍、約2,100名を集めた。国際教育の充実や施設の改築が人気に繋がり、男子を上回る数の女子が入学した。近隣の通学圏内の共学校の一部では女子の応募者の減少が見られた。2018年度に男女別学から共学化した桐蔭学園は基準を大幅に上げた前年に続き応募者を減らしたものの約3,000名を集め県内私立最多の応募者数を維持している。
コロナウイルス禍での初めての入試となるが、「【東京】私立高校編」で触れたように、混雑した電車での通学を避け、自転車通学も可能な学校を選ぼうとする受験生が増えるかもしれない。電車で通学するにしても中心地より周辺部にある高校のほうが「密」を避けられると考える受験生や保護者もいることだろう。相鉄線とJRとの相互乗り入れによって通学圏は拡大しているのだが、コロナが収まるまでその影響は大きくならないかもしれない。
大学入試制度の大幅な変更は先送りされたが、制度変更への不安感から大学付属校を希望する傾向は強い。2020年度は、日本大学、日本大学藤沢などが応募者を増やした。他の大学付属校では前年並みか応募者の減少も見られたものの難度は下がっていない。大学付属校人気は続きそうだ。
情報を集め、様々な入試スタイルの活用を
東京と同様、神奈川の私立高校入試は1月22日の推薦入試からスタートする。第一志望者のみが対象だが、私立第一志望でも2月10日から開始する一般入試で受験するケースが少なくないのが神奈川の特徴だ。公立第一志望で私立を併願する場合も一般入試を受験することになる。
より多くの受験生が応募できるように一般入試を複数回行う私立高校もある。志望順位によって基準は違うものの、神奈川では調査書点が合否を左右するケースが多い。また、調査書点に関係なく学力検査結果によって合格を出すオープン入試もある。オープン入試には特待生選抜を兼ねたものがあり、推薦や一般で合格を留保した上でチャレンジできる場合がある。一方、特待生選抜で一般枠でスライド合格を出すところもある。複数の学科やコースのある私立高校では、受験した学科では合格しなくても別の学科やコースでスライド合格を出すこともある。高校によって違うので情報収集が重要だ。
神奈川独特の書類選考型入試
神奈川県内の私立高校では公立入試制度変更後、入試日程が限定されるようになったため、書類選考型入試が急増した。
書類選考の最大の長所は面接等の試験を受けるために学校へ足を運ばなくてよいのと筆記試験がない、という点だろう。調査書点が合否を左右する傾向の強い神奈川ならではの入試システムといえる。
2 0 1 8 年度に前年より2倍以上の応募者を集めた桐蔭学園で最も多かったのは書類選考だった。2 0 1 9 年度には向上が書類選考を導入し、2 0 2 0 年度も桐蔭学園に次いで多くの応募者を集めた。人気が急上昇した横浜で最も応募者を集めたのも書類選考だった。同校は入学生も多かったので、次年度は基準を上げる可能性が高いので注意が必要だ。
コロナ禍で公立中学の成績の付け方が厳しくなるとは考えにくいことから、基準を下げる私立高校は少ないことが予想される。コロナの影響で例年より次年度入試についての各校の入試要項の公表が遅れているため、目安を持ちにくい状況だが、まず調査書点を上げることが大事だ。定期試験の得点や提出物の評価、授業態度など、少しでも改善できそうな点があれば前向きに取り組みたい。
書類選考では一定の基準が求められるので利用できる受験生は限られる。また、公立中学校での調査書点のみで合格が決まるため、入学後の学力差が大きいことも考えられる。入学後の経過から基準の見直し等を検討する高校もあるのではないか。推薦も含め学力検査抜きの選抜が応募者を集める状況が続いているが、導入校の増加は一段落するかもしれない。
2021年度は変更点が少ない
神奈川県では毎年のように、共学化や完全中高一貫校が高校募集を再開する動きが見られた。2 0 2 1 年度は珍しく各校の動きに変化が見られない。今年度、人気を集めた高校で基準を上げる可能性はあるが、全体的には今年とそう大きく変わらない入試状況になりそうだ。