ここに注目2021年度東京都高校入試(受験情報)ムーブ編集部

2020/10/01
ここに注目2021年度東京都高校入試
都立高校―続く都立志向の減少傾向
公私間学費格差の縮小と大学入試の変化が影響
2020年度入試では前年度までに続き、都立志向が減少し、私立志向が増えた。
2020年1月発表の校長会志望校調査では都立高校第1志望の割合が3年前から71.1%→68.2%→66.9%→65.6%と減り続けている。これまでも推薦入試では高倍率に対する敬遠傾向から減少傾向が続いていたが、一般入試でも1.42倍→1.42倍→1.38倍→1.35倍→1.34倍と3年連続して緩和した。
人気校では高倍率を維持する一方、定員割れ校も多く、2次募集数は1,138名→1,647名→1,443名→1,437名と2年連続で減少したもののそれでも定員を満たせず欠員補充のため、3年連続で3次募集が実施された。
一方、都内私立高校では第一志望者のみが出願できる推薦入試の応募者が約400名増えた。通信制を希望するケースも増え、都立離れが続いている。
都立希望が減り、私立希望が増え続けている主な理由は以下の3点。
 ①授業料無償化政策で公私間の学費格差が縮まった。
 ②地方創生政策により都内23区内の私立大学の定員の厳格化で私立大学が難化、大学付属校もある私立高校への期待感が高まった。
 ③2021年以降の大学入試改革への対応力が公立より私立にありそうだ、
と考える受験生・保護者が増えた。

今後も私立志向増は続くか
都内在住の場合、授業料軽減助成制度による助成金を上乗せできるようになって4年めになる。私立高校に通学している年収760万円未満の世帯では都内私立高校の平均授業料442,000円が軽減されていたが、今年度から対象は年収910万円未満に拡大、平均授業料の上昇によって上限軽減額も461,000円に増えた。新型コロナウイルス禍で経済状況の悪化が予想される中、都立高校人気が上がる可能性もあるが、助成金の充実は浸透しているので私立人気が継続されることも考えられる。
大学入試に関しても私立優位のイメージが強い。都内23区の私立大学定員数の厳格化で中堅校レベルでも難化傾向が見られた。2021年春から行われる大学入学共通テストでは大幅な変更は先送りされたが、名称とともに変更されることへの受験生の不安感が完全に払拭されたわけではない。
 今後も大学の定員が増えるわけではないので、大学入試の難化は続くだろう。公私を問わず多くの高校が大学合格実績を下げる中、進学実績を伸ばしている私立高校や大学付属校の人気は今後も高まりそうだ。
  
学力検査、平均点合計はほぼ同じ
都立高校入試では2016年度からマークシート方式を導入したが、5科平均の合計点は導入前年から309.5点→302.1点→298.1点→323.4点→307.5点→307.3点と推移し、今年は下降した前年とほぼ同じだった。
教科別に見ると、2年連続ダウンから2年連続で上昇した国語が65.6点→73.9点→69.5点→65.9点→71.0点→81.1点で最も高かった。下降した前年とほぼ同じだった英語が57.8点→68.0点→54.4点→54.7点。数学も56.3点→66.5点→62.3点→61.1点と2年連続でダウンしたが、差は小さかった。3年連続で上昇していた理科は大きくダウン、61.5点→67.1点→53.4点で5科中最も低かった。前年に大きく下降していた社会が61.5点→52.7点→57.0点と上昇した。
マークシート方式の導入で選択問題が増えれば、正答率・平均点ともに上がりそうなものだが、2020年度も国語以外は50点半ばから60点台前半で落ち着いてきている印象だ。今年の平均点から次年度以降の問題の難度が多少調整される可能性も考えられる。
コロナ休校の影響を配慮して都立一般入試の学力検査で出題される範囲は削減されるが、難度が極端に変わるとは考えにくい。また、今回、出題範囲から除外される数学の三平方の定理や英語の関係代名詞を理解できていないと、高校入学後の授業についていけなくなる危険性がある。学習すべき単元としての優先順位が下がるのはやむを得ないが、決して学ばなくてよいわけではないことに注意を促しておきたい。
 
実倍率は緩和しても1万名以上が不合格
都立高校希望者は減ったものの、全ての都立高校の人気が下がっているわけではない。一般入試の不合格者は3年連続で減少したものの10,172名で1万名を超えている。定員割れは1,400名を超え続けた一方、高い実倍率校に変わりはなく人気の二極化傾向が続いている。全体の平均実倍率が緩和しても、多くの都立高校の実倍率はあまり変わらない可能性が高い。特に難関校・人気校を志望する場合は油断せずにのぞむべきだ。
推薦入試では前年の2.61倍から2.55倍に平均応募倍率が下がった。それでも高倍率に変わりはない。学力検査はなく、面接・集団討論、小論文、調査書で総合的に判断される選抜方法は、今後改革が予定される大学入試制度と重なる部分が少なくない。経験を積む意味でもチャレンジする価値はあるだろう。

私立高校―大学付属校・進学校を中心に私立人気続く
都民の私立高校の授業料無償化対象が拡大
都立高校のページでも触れたが、2020年度から都内在住の世帯年収910万円未満の世帯を対象に、都内の私立高校平均授業料年間46万1,000円までの助成金が支給されるようになった。これまでの対象760万円未満の世帯から拡大した。条件は都内在住であることだけで、都内私立はもちろん都外私立に通学していても対象となる。
経済的な理由で都立第一志望だったご家庭でも、私立を併願校として視野に入れたり、第一志望にしたりできるようになった。実際、私立志望の割合は増え続けていて、「学費が高い」という理由で私立を敬遠するご家庭の減少がうかがえる。

コロナ禍、初の入試の影響は?
コロナ休校期間中、高校の対応も様々だった。緊急事態宣言がいつ解除されるかわからない状況の下、新年度が始まり、多くの学校では新しい教科書とともに各教科の課題が生徒に送られた。一方、休校が始まった3月からオンライン授業を導入した私立高校もあった。「学び」を継続するための試行錯誤が各校で進められた。インターネットを通じた既存のシステムを使ったり、授業動画を作成・配信したりする高校もあれば、課題を郵送し期限までに提出を促し、生徒からの質問にはネットや電話で対応した高校もあった。公立より私立のほうが緊急事態に素早く対応した印象が強い。また、私立の中でも高校によって対応力の差が表れていた。コロナ禍が解決していない中、各校の取り組みは今後の人気動向に影響を及ぼすかもしれない。
また、満員電車での通学を敬遠する受験生が増えると、都心より周辺部の学校や自転車通学できる近隣の学校を希望する受験生が増えることも考えられる。経済状況が厳しくなることが予想される中、特待生制度や奨学金制度のある学校への期待感が高まる可能性も高い。
なお、入試の出題範囲については一部の難関大学付属校を除く多くの私立高校で都立高校のように出題単元を一部削除することが予想される。
  
改革後の大学入試に向けての学校選び
中3時点で大学進学希望者が60%を超えている中、大学入試改革は気になるところだろう。改革は先送りされたものの制度変更への対応が大学によって様々で、詳細について不確定な部分も少なくない。そのため、大学付属校のほうが確実に進学できると考える受験生や保護者は少なくないだろう。
大学付属校を希望する場合、系列大学への進学率や希望学部・学科の有無なども知っておく必要がある。また、付属校ではない高校でも制度変更の影響を受けない学内大学推薦枠が注目を集めるかもしれない。
一連の改革の意図のひとつは変化する社会で求められる人材の育成にある。どこの大学を卒業したかではなく、大学で何を学び、それをどのように社会で活かしていくのかが問われている、と考えるべきだろう。そのためにふさわしい環境としての学校選びという視点を持つべきではないか。
都立と私立のどちらが有利なのか単純に結論できないが、同じくらいの難易度で大学合格実績を比較すると公立より私立のほうが優位に見えることは珍しくない。制度変更後への対応と合わせ、情報を収集したいところだ。

2021年度 都内私立高校・主な変更点
佼成学園…グローバルコースを新設
佼成学園女子…成城大学と高大連携協定締結
国学院久我山…女子部を理科系のみから文科系・理科系の募集へ
桜丘…特待コース→スーパーアカデミック(難関選抜)コース、特進コース→アカデミック(文理特進)コース、クリエイティブリーダーズコース→グローバルスタディーズ(グローバル探究)コースに変更のほか、キャリアデザイン(キャリア探究)コースを新設
聖学院…グローバル・イノベーションクラスのみの募集へ
東洋女子…全家庭を対象に授業料無償化へ
日本工業大学駒場…工業学科募集を停止し普通科のみに、文化未来コース、英語国際コース新設
日本女子体育大学附属二階堂…特別進学コース新設、総合進学・体育・保健福祉コースはキャリアデザインコースに統合
本郷…高校募集停止
村田女子…女子校から共学化、「広尾学園小石川」に校名変更、中学募集も再開
八雲学園…女子校から共学化
<<戻る