公私間学費格差の縮小と大学入試の変化が影響
2020年度入試では前年度までに続き、都立志向が減少し、私立志向が増えた。
2020年1月発表の校長会志望校調査では都立高校第1志望の割合が3年前から71.1%→68.2%→66.9%→65.6%と減り続けている。これまでも推薦入試では高倍率に対する敬遠傾向から減少傾向が続いていたが、一般入試でも1.42倍→1.42倍→1.38倍→1.35倍→1.34倍と3年連続して緩和した。
人気校では高倍率を維持する一方、定員割れ校も多く、2次募集数は1,138名→1,647名→1,443名→1,437名と2年連続で減少したもののそれでも定員を満たせず欠員補充のため、3年連続で3次募集が実施された。
一方、都内私立高校では第一志望者のみが出願できる推薦入試の応募者が約400名増えた。通信制を希望するケースも増え、都立離れが続いている。
都立希望が減り、私立希望が増え続けている主な理由は以下の3点。
①授業料無償化政策で公私間の学費格差が縮まった。
②地方創生政策により都内23区内の私立大学の定員の厳格化で私立大学が難化、大学付属校もある私立高校への期待感が高まった。
③2021年以降の大学入試改革への対応力が公立より私立にありそうだ、
と考える受験生・保護者が増えた。
今後も私立志向増は続くか
都内在住の場合、授業料軽減助成制度による助成金を上乗せできるようになって4年めになる。私立高校に通学している年収760万円未満の世帯では都内私立高校の平均授業料442,000円が軽減されていたが、今年度から対象は年収910万円未満に拡大、平均授業料の上昇によって上限軽減額も461,000円に増えた。新型コロナウイルス禍で経済状況の悪化が予想される中、都立高校人気が上がる可能性もあるが、助成金の充実は浸透しているので私立人気が継続されることも考えられる。
大学入試に関しても私立優位のイメージが強い。都内23区の私立大学定員数の厳格化で中堅校レベルでも難化傾向が見られた。2021年春から行われる大学入学共通テストでは大幅な変更は先送りされたが、名称とともに変更されることへの受験生の不安感が完全に払拭されたわけではない。
今後も大学の定員が増えるわけではないので、大学入試の難化は続くだろう。公私を問わず多くの高校が大学合格実績を下げる中、進学実績を伸ばしている私立高校や大学付属校の人気は今後も高まりそうだ。
学力検査、平均点合計はほぼ同じ
都立高校入試では2016年度からマークシート方式を導入したが、5科平均の合計点は導入前年から309.5点→302.1点→298.1点→323.4点→307.5点→307.3点と推移し、今年は下降した前年とほぼ同じだった。
教科別に見ると、2年連続ダウンから2年連続で上昇した国語が65.6点→73.9点→69.5点→65.9点→71.0点→81.1点で最も高かった。下降した前年とほぼ同じだった英語が57.8点→68.0点→54.4点→54.7点。数学も56.3点→66.5点→62.3点→61.1点と2年連続でダウンしたが、差は小さかった。3年連続で上昇していた理科は大きくダウン、61.5点→67.1点→53.4点で5科中最も低かった。前年に大きく下降していた社会が61.5点→52.7点→57.0点と上昇した。
マークシート方式の導入で選択問題が増えれば、正答率・平均点ともに上がりそうなものだが、2020年度も国語以外は50点半ばから60点台前半で落ち着いてきている印象だ。今年の平均点から次年度以降の問題の難度が多少調整される可能性も考えられる。
コロナ休校の影響を配慮して都立一般入試の学力検査で出題される範囲は削減されるが、難度が極端に変わるとは考えにくい。また、今回、出題範囲から除外される数学の三平方の定理や英語の関係代名詞を理解できていないと、高校入学後の授業についていけなくなる危険性がある。学習すべき単元としての優先順位が下がるのはやむを得ないが、決して学ばなくてよいわけではないことに注意を促しておきたい。
実倍率は緩和しても1万名以上が不合格
都立高校希望者は減ったものの、全ての都立高校の人気が下がっているわけではない。一般入試の不合格者は3年連続で減少したものの10,172名で1万名を超えている。定員割れは1,400名を超え続けた一方、高い実倍率校に変わりはなく人気の二極化傾向が続いている。全体の平均実倍率が緩和しても、多くの都立高校の実倍率はあまり変わらない可能性が高い。特に難関校・人気校を志望する場合は油断せずにのぞむべきだ。
推薦入試では前年の2.61倍から2.55倍に平均応募倍率が下がった。それでも高倍率に変わりはない。学力検査はなく、面接・集団討論、小論文、調査書で総合的に判断される選抜方法は、今後改革が予定される大学入試制度と重なる部分が少なくない。経験を積む意味でもチャレンジする価値はあるだろう。