2020年度中学入試はどう行われたか?(受験情報)ムーブ編集部

2020/07/10
2020年度中学入試はどう行われたか?
2020年度入試の全体状況です。
実は、首都圏では2016年度から5年連続で中学受験者数は増加しています。
なぜ増えているのでしょう? 最近の中学入試はどう変わっているのでしょう?
どんな動向が見られたのでしょう? どんな学校が人気だったのでしょう? そうしたことを取り上げてみましょう。

全体状況は?
2020年度中学入試はどの地域でも出願者が増えましたが、特に23区と埼玉での増加が著しく、唯一神奈川だけが小学校卒業者数の増加に見合った数になりませんでした。
出願者が増えた要因としては以下のことが挙げられます。
・今年は小学校卒業者数が首都圏で3000人以上増えたこと。
・大学入試においてAO・推薦の募集枠が広がるとなると、6年間でいろいろな体験を積める中高一貫教育のほうが有利であること。
・来たる「グローバル化社会」への対応において私学のほうがいろいろな取り組みをしていること。
などから、わが子に中高一貫教育を受けさせたいと考える家庭が多くなっていることがあるでしょう。そのうえ近年は、進学塾に通わないで、新しいタイプの入試を受ける層が増えてきていることも、中学受験のすそ野が広がっている背景です。

受験者数はほぼ2000名増
どのくらいの人が中学受験をしているか、という数字は実は公的な機関はどこも出していません(東京都教育委員会の場合は、小学6年生がどのような学校種<公立、国立、私立、公立中高一貫校>に進学したかという数字を12月ごろに公表)。で、中学受験者数は、大規模な模試を行っている会社がそれぞれに推定して出しています。
〇首都圏模試 2200名増で49400名
〇日能研 500名増で60000名(公立中高一貫校を含む)
〇四谷大塚 1000名増で51500名
今年は公立中高一貫校の受検者が減っているので日能研は増加幅が小さいですが、3大模試のいずれもが受験者数が増えたと計算しています。首都圏ではおおよそ5~6人に1人が中学受験していることになります。
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顕著な動向は?
☆ 男子 共学校⇒男子の進学校
〇巣鴨、世田谷学園、攻玉社、早稲田、駒場東邦
 ・・・早くに前年の出願者数を10%以上上回る
 ・・・1月27日段階で2月1日に入試を行う都内の男子校26校のう ち半数の13校が前年の最終出願者数を上回った。50%。
〇都内の共学校の男子で1月2 7日の段階で最終出願者数を上回っていたのは、武蔵野大学、穎明館、文化学園大学杉並、八王子学園八王子、日本大学第二、工学院大学附属、日本大学第三、国学院久我山、淑徳、中央大学附属、成蹊、明治学院、かえつ有明くらい。
 ほとんどが多摩地区。区部も文化学園大学杉並、日本大学第二、国学院久我山と杉並区が多く、そのほかの地区は淑徳、かえつ有明のみ。男子校の選択肢がいろいろある地区は男子校に流れた。2月1日に入試を行っている都内の共学校は78校あるから、上記13校は比率で言えば17%。

☆ 女子「独自性」のある学校が強い
〇女子では昭和女子大附属、麹町学園女子、晃華学園、日本女子大附属、東洋英和女学院、恵泉女学園、女子美術大付属、跡見学園が早くに最終出願者数を115%も上回った。
 ・・・「独自性」のある学校は早くに決めていて、特色が弱い学校は他校の出願状況をにらみ1月30日・31日に出願していることが読み取れる。

☆ 近年の共学の人気校の増が止まる
〇渋谷教育学園渋谷、広尾学園、三田国際学園、開智日本橋学園、都市大等々力、宝仙学園・・・・・・ここ数年大人気だった「時代を語る学校」が軒並み減少したことも大きな特徴。
 A 難度の上昇による敬遠?
 B 大学合格実績のエビデンスがないこと?
 C どこもが語るようになり、「先進性」が希薄に?
が、多摩地区では武蔵野大学(男子)、工学院大附属は増加・・・多摩地区、他県ではまだ「先進性」は学校選択の大きな要素。

☆ 説明会の均質化
〇グローバル教育( 英語4 技能、多彩な海外研修、国際交流)、STEAM教育、ICT教育、探究・・・・・・どこもが語る「標準装備」
 ・・・わが子の将来が不安な保護者にとっての「安心感」。
〇これがないと不安だが、これで印象を残すのは大変。よほど優れた内容や高度なところまでいかないと評価や信頼感を得られない。

☆ 付属校はまだら模様
<受験者数ベース>
〇早稲田系は早稲田のみ増、慶應系は湘南藤沢のみ増。
〇明治系は3校とも減。
〇青山学院系は青山学院が減、青学横浜英和、青学浦和ルーテルが増。
〇立教系は香蘭女学校を含め4校とも増。
〇中大附は男子増で女子減、法政二は男子減で女子増、法政大学、中大横浜は減。
〇学習院系は学習院増、学習院女子減。
〇明治学院は男子増で女子減、成蹊、成城学園は減。
〇日大系は軒並み増、東洋大京北も増、東海大系は3校とも増。
〇併設大への進学者が多い女子大付属はすべて増・・・昭和女子大附属、日本女子大附属、女子美術大付属。

☆ そのほかの動向①
〇出願者増の要因・・・午後入試、新タイプの入試の増加。 
〇2月1日午前受験者の60%以上が1日の午後も受験。
〇難関校、上位校に限らず中堅校も難化⇒不合格⇒後半日程の受験者増。
〇宗教系(キリスト教系、仏教系)が回復・・・「標準装備」+αを求める⇒「精神性」(思春期の難しさを語る学校を評価)。

☆ そのほかの動向②
<新しいタイプの入試>
〇適性検査型・・・安田学園、宝仙理数、浦和実業、聖徳学園、西武文理、八王子学園、千葉明徳、駒込など特定の学校に集中⇒集まらない学校が多数⇒撤退も。
〇英語入試・・・入試回数は増えているが、受験者がごく少ない入試が多い。
〇算数入試・・・塾通いしている受験者が受けるので、英語入試と比較して受験者は多い
〇自己アピール型、プログラミング型が増加傾向。

☆ 公立中高一貫校出願者数軒並み減
〇男女とも増は 都立富士、神奈川県立平塚のみ。
〇男子のみ増は 千代田区立九段のみ。
〇女子のみ増は 都立立川国際、都立両国、横浜市立南、千葉県立千葉、千葉市立稲毛のみ。
〇これまでは都立小石川、千葉県立千葉、千葉県立東葛飾など難度が高いところは男子のほうが多かったが、2020年は横浜市立サイエンスフロンティア以外すべてが男子より女子のほうが多くなった。

減の理由は何か〉
△倍率の高さ・・・無駄な努力はさせたくない。
△塾通いが必要・・・経済的な断念。
 2020年度入試は以上のように減りましたが、コロナ後の経済状況の悪化から2021年度入試では出願者は一転増加すると考えたほうがいいでしょう。
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