未来にジャンプ!~10年後に活かせる力を培う~(共学校)国士館中学校

2019/09/18
未来にジャンプ!~10年後に活かせる力を培う~
「学校が楽しい!」――国士舘中学校の生徒はみんな、目を輝かせてそう言います。そして「そんな生徒たちが私たちの誇りです」とおっしゃるのは、今回お話を伺った中学教頭の神山優子先生です。「本校では、授業でも部活でも行事でも、生徒がともに活動し、お互いに理解し合えるような機会をたくさんつくっています。けっして派手な活動ばかりではありませんが、日々地道にコミュニケーションを続けることで、一人ひとりが自分の役割を認識し、それぞれの特性を活かし合うこともできるようになります。そうした人間関係を築くことが、心の底から『学校が楽しい』と感じる土台になっているのではないでしょうか。」
100年以上の伝統を誇る国士舘の教育の根幹は「世のため、人のために役立つ人材を育てる」こと。人と人が直に触れあうことを何よりも大切にして、すぐに結果を出すことのみを求めるのではなく、将来、社会に出たときにこそ必要となる力を育みます。
 
「読む力」「書く力」を身につける新たな取り組みがスタート
読む、話す、聞く、書く。今、「英語4技能」ならぬ、「国語4技能」が注目を集めています。大学入試センター試験に代わる2021年の「大学入学共通テスト」から記述式問題が導入されることもあり、中高教育において確実な読解力や記述力の養成は必須といえます。ところがここ数年、中高生の読書離れは著しく、国語力も大きく低下しているのが現状です。国士舘中でも、先生方は長く頭を悩ませてきました。「なかには本をまったく読まない生徒もいて、その結果、語彙数は圧倒的に不足し、稚拙な文章しか書けなくなっています。辞書に関しては、電子辞書でさえ手に取らない生徒もいます」と神山先生はおっしゃいます。図書室は完備していますが、なかなか足が向かない生徒も多いようです。
「SNSで手軽に動画を見たり、ゲームをすることに慣れた子どもたちには、活字に触れるという行為自体、非常に億劫なことのようです。以前では考えられないことですが、漫画すら読みません。そこで、何とかして生徒に『読む力』『書く力』をつけるきっかけとして、本に親しむ習慣を身につけさせたいと考え、中学生のフロアーである4階の書架に本校教員が自らの蔵書を持ち寄って、生徒がそれを自由に読むことができるようにしました。」書架には、それぞれの先生が中学生のころに好きだった本や影響を受
けた本が並び、生徒は「あの先生はこんな本が好きなんだ」「この本を読んだから、知識が豊富なのか」と興味を持って手に取ります。読後は、本の持ち主である先生に感想を伝えたくなることもあるでしょう。「先生の本」ということが、友だち同士で話すきっかけにもなります。
「実は書架には漫画も置くことにしています。内容については中学生にとって適切かというフィルターをかけますが、漫画が学びにつながることも多いですし、そこから幅広い活字文化に興味が広がっていく可能性にも期待しています。」今後は書店によくあるような、おすすめ本の手書きポップを先生方自身が作成することも考えているそうで、生徒にとって、より親近感の湧く場所になります。
「もちろん、この活動を始めたからといってすぐに読解力や記述力が上がることはないでしょう。ただ長い目で見て、活字に触れる習慣を持つことは、生徒が生きていくうえで大きな宝になるはずです。あせらず、じっくり時間をかけて、生徒の根っこの部分を育てたいと思っています。」
国士舘ならではのグローバルプログラムを展開
社会のグローバル化が急速に進む中、学校教育の現場でも英語力の強化が求められています。国士舘中の英語科の授業は週10時間。特にコミュニケーション力を重視し、ツールとして使える英語を目指す国士舘ならではの指導を展開しています。また中大連携教育の一つとして、国士舘大学21世紀アジア学部から留学生を招き、放課後、「英語村」を開催。中国、ロシア、イランなど多様な異文化に触れる機会を設けています。
中2では福島県にある英国式宿泊施設ブリティッシュヒルズで語学研修を行います。「うちの生徒は好奇心旺盛でこわいもの知らず(笑)。ブリティッシュヒルズでも積極的に行動し、英語でどんどんコミュニケーションをとるので、ネイティブの先生方にも褒められています。」さらに中3以降は希望者対象の海外語学研修も実施。成長の舞台は世界に広がります。
宿泊行事を核として、成長を促す
国士舘中は電子黒板やパソコンを完備し、ICT教育も行っていますが、それとともにアナログな体験も重視しています。特に毎年行われている宿泊行事では、アウトドアで様々な活動をする機会が数多く用意されています。中1のオリエンテーションでは大自然の中をチームごとにクイズを解きながら歩いたり、雪の残る山を登ったりします。中3の移動教室は、伊豆の下田で開国の歴史を学びながら、漁船体験やシーカヤック、シュノーケリング、アジの開きづくりなどに挑戦します。5~6人のグループごとに民宿に泊まって、お手伝いをしたり、おいしい漁師町のご飯をいただくなど、ここでも人との触れ合いを大切にするのが国士舘中らしいところです。「様々な体験のなかでは失敗もたくさんしてほしいですね。中学生のうちならいくら失敗しても、それを乗り越えて成長できるし、その経験が将来につながる糧となります。」

学校生活の様々な機会を通じて社会で必要とされる力を培う
国士舘の教育は「心学」と「活学」の2本を柱としています。「心学」とは、道徳心や正義感、思いやりの心を備えた人材を育成することを目標に、武道と礼法を学ぶこと。そして「活学」とは、社会の一員として活躍できる人材を育成するために、「読書・体験・反省」を基として教養と実践を積み重ねることです。特に「心学」の中心である武道と礼法の精神は、国士舘の教育の基本です。礼法は中1のオリエンテーションで正しい礼をするところから始まり、武道は部活動が全国レベルを誇るだけでなく、全生徒が中1で柔道と剣道を、中2以降はどちらかを選択して学びます。また、書道は畳敷きの和室で正座して習います。
「といっても、私たちには特別なことをしているという意識はないんですよ(笑)。あたりまえのことがあたりまえにできるようにしたいと思っているだけなんです。本校の教育はすべて、国士舘の創立の理念である『世のため、人のために役立つ人材の育成』につながっています。礼法で正しい所作を身につけることは、将来、社会に出たときに必ず役に立つでしょう。武道も、ただ勝つためや技を磨くためのものではなく、礼節を身につけ、相手を思いやる心を培うことを目標としています。また、こうした日本の伝統的な文化を学ぶことは、国際社会でのコミュニケーションにも大きな意味を持つはずです。」
国士舘中が見据えているのは3年後でも6年後でもありません。10年後、生徒が社会に出たとき活かせる力を、土台からしっかりと築き上げます。
文武両道を達成する「放課後学習」
国士舘中では、授業後、全生徒が午後4時まで教室で「放課後学習」に取り組みます。生徒は宿題をはじめ、予習・復習、朝テストの勉強など各自の状況に応じて自習し、担任や教科担任のほか、国士舘大学で教員を目指す学生が教室を回って学習をサポートします。これにより部活動と勉強の両立が可能になり、文武両道が達成できるようになりました。
「部活動は『放課後始まるもう一つの学校』です。授業でも行事でもふだんの学校生活でもなく、部活動だからこそ学べることがたくさんあります。そして部活動に行く前に全員同じ条件で放課後学習に取り組むことで、その後の部活動に思いっきり打ち込むことができます。放課後学習を始めてから、生徒の学力は確実にアップし、時間管理もできるようになりました。中3で部活動を引退したあとも、放課後学習の習慣がついているた
め、そのまま夕方6時まで勉強に取り組む生徒も少なくありません。」
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