男子校ならではの指導で自我を育てる3年間2019(男子校)保善高等学校

2019/09/09
男子校ならではの指導で自我を育てる3年間
「自ら考え行動する」
注目の新プログラムも始動。
保善高校は創立96周年を迎える伝統校で、都内では数少ない高校単独の男子校です。
男子校ならではの伸び伸びとした教育環境も魅力ながら、近年は進路にあわせたカリキュラムの改変、
同校独自プログラムである「未来行動塾」の導入などでも大きな注目を集めています。
保善1年生としてゼロから一斉スタート
4年後に創立100周年を迎える保善高校は、高校単独の男子進学校というありかたを貫いてきました。全員が高1からスタートを切るところが中高一貫校とのちがいで、出来上がった人間関係の中に入っていくのではなく、みんなでゼロから新しい世界を作ってい
きます。そして、男子校特有ののびやかに自分を出せる雰囲気の中で、3年間、学びにクラブ活動に、そして自分の興味ある世界を掘り進むことに没頭できます。
入試広報部長の鈴木先生は、保善の指導の基本は「おおらかに見守ること」だと言います。「入学直後、クラスメイトと打ち解けるのに男子は時間がかかります。本校では教師が関わるのは必要なポイントだけにして、あとは彼ら自身が共通点を見つけたり、自分とは違う個性を認め合ったりして自然に人間関係ができていくのを待ちます。苦労もしながら自力でその過程を辿ることが大切なのです。」
こうして、GWが明ける頃には生徒同士が笑顔で話す姿が増え、体育祭で一気にクラスの雰囲気が出来上がっていくのが例年の流れです。そこから先は、男子同士の自由闊達な空気の中で、ハイレベルなクラブ活動に打ち込む生徒もいれば、文化部で同好の士を見つけ音楽や美術、その他に勤しむ生徒もあり、それぞれの高校生活を充実させていきます。

3年間で勝負。学力をつけ、進路を切り拓く
生徒を型にはめず、自発性を大切にして一人ひとりの力を引き出していく保善高校ですが、その一方で、3年間で進路を開拓する力をつけていかなくてはなりません。「男子はあまり逆算をしません。3年間で勝負し結果を出すには、進路については1年次から積極的に情報を提供して刺激を与え、学ぶ機会をつくっていく必要があります。自主性を尊重する部分と働きかけて行動を促す部分のバランスが重要です」(鈴木先生)
こうした考え方は指導システムにどう反映されているのでしょうか。まず、毎朝の授業前に20分間、内容を自分で考えて勉強する自学の時間をとっています。さらに5分間、朝読書があります。わずかな時間でも書物に向き合うことで心が静かになり、1時間目の学習姿勢がちがってくるのです。
月例テストは英数国それぞれの基礎事項に絞って出題し、日ごろの学習が順調にできているかを客観的に把握します。
夏休みは前期・後期一週間ずつのサマーセミナーを開講、生徒たちの要望に応えるたくさんの講座がずらりと並びます。同じく冬にはウィンターセミナーを実施します。
大学受験に向けては3つのコース――中堅私大以上の現役での進学をめざす「大学進学クラス」、G-MARCHレベルへの現役進学をめざす「大進選抜クラス」、国公立・私立の難関大や医・歯・薬学部合格をめざす「特別進学クラス」があります。特別進学クラスは受験勉強の負荷が大きいことを考慮し、3年次は国公立と私立・理系と文系の4クラスに細分化して効率よく学習を進めていきます。
「高校入学後に学力が伸びる子、志望が変わる子がいるので、2年への進級時に本人の希望等でクラスを移動することができます。どのクラスも、3年間よく勉強してできるだけ高い学力に到達することが目標です。そのうえで、進路は生徒本人、保護者、担任の教員で協力して、本人にとっての最良の道を模索していきます。」
進学後を見据え知の技法を学ぶ「未来考動塾」
特別進学クラスに設置された、ゼミ形式で探究活動を行う「未来考動塾」が今年で3年目を迎えました。
「自分で考えて自分で動く学びの時間です。従来型の学習だけではなかなか身につかない主体性を育成する狙いで始めました。学に関するリテラシーを習得しているのといないのとでは大学進学後の状況が違ってきます。」と、特進部長の山田先生は説明します。
1年次の未来考動塾は、保善高校の所在地である身近な新宿について調べます。まず「知の技法」として、仮説の立て方や検証のしかた、立論等を学び、資料探しや実際に足を運んでの情報収集、調査活動でそれを実践します。
2年次は12月の沖縄修学旅行に向けて、「沖縄学」に取り組みます。求められるのは、よく調べて事実を把握し、問いを抽出し、その答えを探るという前年より一歩進んだ知的生産活動です。
そして、3年次では「知の創造」をめざして、各自が自由にテーマを立て、二年間の学びを生かして探究を行い卒論をまとめます。進学校で受験学年まで探究活動を続けるのは極めて珍しく、本筋を大切にする同校ならではと言えるかもしれません。
「3年次の完全自主活動で得るものが大きいので、受験勉強に障らないよう週一回の授業の中で進めています。生徒たちは、この時間は知識の習得が大半を占める受験勉強から解放されることもあり楽しく探究に取り組んでいます。普段の学習を振り返り、その意味を確認する機会にもなっていますね」
入学以来、未来考動塾で学んできた現3年は、先生が教室に行くと生徒同士で学習内容を議論した形跡が黒板にしばしば残っているなど、学習に積極的な姿勢が顕著だと言います。探究活動は着実に効果を現わしているようです。
学習とクラブ活動の両立。文武両道を成し遂げる
生徒のクラブ加入率は75%。伝統を誇るラグビー部をはじめ、サッカー部、バスケットボール部、陸上競技部、空手道部などは全国大会出場をめざす強化指定クラブとなっています。学習とクラブ活動を両立させるのが同校の教育方針。それは運動部・文化部所属生徒の4年制大学現役進学率が85%という高さで、文武両道を成し遂げていることがわかります(卒業生全体の4年制大学現役進学率70%を上回っている)。修学旅行や校外授業で一緒になる他校の生徒と比べると、同校の生徒は集合時間の厳守、あいさつの励行そして服装・頭髪の乱れのなさなどで特筆されるそうです。学校でも基本的なことは言うものの、クラブなどの上級生がしっかりとしているのを見て、それを下級生が自然に学んでいる側面があります。勉強以外の生活基盤の確立をしっかりとさせるのもクラブ活動の効用です。仲間、先輩、後輩との人間関係は一生の宝ものです。クラブ活動はそのような出会いを通して、人間関係の構築力を高める場ともなっています。
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