学校見学術ささやかなヒント(受験情報)ムーブ編集部

2018/10/30
『ムーヴ』教えたい
学校見学術
ささやかなヒント


そろそろ6年生ご家庭はラストスパート体制でしょうか。学習の最終仕上げとともに、本格的な学校選びの最終章です。9月から、毎週のように行事や説明会が催されます。
5年生以下のご家庭にとっても、学校研究のハイライト期です。12歳で、夢と希望に満ちた春を迎えるために、ムーヴ編集部からの秋の学校研究についてのヒントをお届けします。

綿密な「事前学習」から
着手しましょう

 必ずキャンパスに足を運んで見極めましょう。学校の先生方の願いです。ムーヴが繰り返す最大のルールです。学校研究は、喩えるなら図書館で書籍を開く座学ではなく、現場を巡ってデータを集めるフィールドワークです。
 まず、「事前学習」を要します。子どもたちの校外学習や実験実習と同じです。主な資料は学校ホームページです。学校案内書を入手しているのであれば役立てましょう。

 第一に、学園の根幹を説明してるページを熟読してください。私学は、個人や団体の理想を実現するところです。在校生保護者は、その志に根底から賛同しなければなりません。昨今は、各校が進化。高機能化しました。スペックを比べるだけでは、特質が見えにくい。でも、根を精査すれば、各私学のカラーが際立つでしょう。

「何を願って建学したのか」から丁寧に読み解きましょう。「教育理念」「建学の精
神」「校訓」等に込められた想いに共鳴できますか?

大学や宗教団体が設置した中学・高等学校であれば、母体の精神から確かめてく
ださい。そして、創立から今に至る「沿革」を辿りましょう。


基盤を築いた人物(建学者・初代校長等)
人となり、業績を調べましょう。
そのスピリットは
21世紀の学園に息づいています。

学問をリードした研究者たちが、若者たちの育成に尽力しました。下記の博士の名を覚
えましょう。それぞれ、何を成し遂げたのでしょうか。

横井 時敬 博士(農学)/東京農業大学初代学長
天野 貞祐 博士(哲学)/獨協大学初代学長・獨協中高第13代校長
丹羽保次郎 博士(工学)/東京電機大学初代学長
松前 重義 博士(工学)/東海大学建学者


コース(クラス)や長期プログラムが
期待を集めています。

以前のように大学進学に備えるだけの「クラス分け」ではありません。その理念・主旨を正しく理解しましょう。

【コース・プログラム例】
「グローバルリーダープロジェクト」
…佼成学園中学校
「東大・医進クラス」
…八王子学園八王子中学校
「ダブルディプロマコース*」
…文化学園大学杉並中学校*高等学校のコース

日本には仏教、神道、キリスト教が支える私学が
子どもたちを導きます。
宗教主義が授ける恩恵は?

【仏教主義校例】
鎌倉学園中学校/臨済宗〔建長寺〕
芝中学校/浄土宗〔増上寺〕
世田谷学園中学校/曹洞宗〔吉祥寺〕
鶴見大学附属中学校/曹洞宗〔総持寺〕
藤嶺学園藤沢中学校/時宗〔清浄光寺(遊行寺)〕
■上記の寺院名は、源流となる学問所・僧学校(等)を設立した寺院
【例】世田谷学園は、文禄元年(1592年)江戸神田台(後に本郷駒込)に、曹洞宗吉祥寺の学寮(後に“旃檀林”)として創始。
※鶴見大附属の源流は寺院の僧学校・学問所ではなく、大正13年(1924年)創立の光華女学校。
※日大豊山は、現在は日本大学が設置する正付属校ですが、源流は1872年(明治5年)に護国寺に設置された真言宗「宗学林」。

【キリスト教主義校例】
東京純心女子中学校/長崎純心聖母会(カトリック)による創立
恵泉女学園中学校/河井道(※)の信仰に基づく
聖学院中学校/米国プロテスタント系宣教師による設立
女子聖学院中学校/米国プロテスタント系宣教師による創立
鷗友学園女子中学校/石川志づ(※)の信仰に基づく
【参考】聖学院の設立者は、米国ディサイプルス派の外国伝道協会宣教師H・H・ガイ博士(Dr. Harvey H. Guy)。
恵泉女学園と鷗友学園は教会が設置した「ミッションスクール」ではありませんが、学園の基盤を築いた教育者の信仰に基づきます。 →河井道は学園創立者/石川志づは初代理事長・第二代校長


何を得たいのか? 
学校訪問時は主題を明確に

 好奇心や問題意識が耕されていなければ、「講義・実習」は無益です。子どもたちの学習と同様です。説明会・学校行事は時間が限られます。貴重な機会を最大限に活かすために主題を明確に定めてください。
 事前の予習時に、疑問点・不安点を列挙してください。受験生ご本人から「知りたいこと」「気掛かりなこと」をヒアリングしてください。すべて、書き出しましょう。その「リサーチ事項メモ」を握りしめて、各校に向かいましょう。
 ホームページや学校案内書の記載事項をチェックしてください。「読めばわかる」事
柄を、わざわざ学校で尋ねるのは時間の無駄です。応対の先生方のトークが弾みません。また、学習塾には主要校の情報が蓄積されているはずです。塾の進路指導担当者も頼りです。

必ずメモを残してください。最近のスマートフォンは録音機能を備えています。「マ
ナーモード」「機内モード」等の適切な設定のもと、録音しておくと「復習」時に有益です。


さあ、キャンパスを見渡そう!
予習時に集めた疑問・不安をひとつずつ消しましょう。
授業を見学できるのであれば…

 現在は「アクティブラーニング」スタイルが主流です。教室内は賑やかです。生徒主体のレッスンは指導者の力量が問われます。正しい目で審査しましょう。
 アクティブラーニング型・講義型のいずれも生徒の表情を見つめてください。それだけで授業品質がわかります。子どもたちは純朴。志気・意欲は眼差しに映るからです。現在、授業の審査基準は、「わかりやすい」説明技術そのものではなく、学習者(=生徒)の状態です。

○授業が楽しければ子どもたちの目が輝きます。自ずと姿勢が前のめりになります。
(逆につまらないとうつむきます。椅子に浅く腰掛けて足を投げ出します。)
○ポツンと取り残された生徒がいないか? ディスカッションで一部の生徒が支配していないか?
(たとえシャイな生徒でも、「参加させる」が指導者の腕の見せ所です。)

【先生の指導力をはかるポイント例】
生徒に自由に委ねているようで、統制しているか?
生徒を評価する発言が適切か?(特に生徒が誤ったとき)
常に全員を見渡しているか?特定生徒に気をとられていないか?


説明会・個別相談会
先生方への質問術(ヒント)

大枠の問いで広範な回答を引き出しましょう。

《例》
 弁当を持参する生徒さんはどれくらいですか?」
◯ 徒さんは、昼休み、どのように過ごしていますか?」
→回答に「お弁当」「カフェテリア」「売店」が盛り込まれます。また、「図書館で読書」「グラウンドでボール遊び」等、周辺話題に広がります。

「相談」ニュアンスで
助言を仰ぎましょう。

応対するのは学校の先生、つまりプロの教育者です。具体的な悩みを打ち明ければ親身に応じていただけるでしょう。学校の方針・手法を聞き出すため有益です。ただし、あくまでヒアリングの導入です。在校生でなければ実際に解決できません。リアルな相談は入学後!

《例》
「気が小さくて集団生活で萎縮。中学進学後も心配です…。」
「算数の成績が伸びなくて・・・。きっと数学でも落ちこぼれそう…。」 
「落ち着きがなくて、小学校や学習塾で忘れ物ばかり…。」
「運動が苦手。電車に夢中。男の子はスポーツに打ち込んでほしい…。」

先生の担当する教科や
学年を尋ねましょう

話題は、将来ビジョンではなく、今日の授業の工夫や、クラスのエピソード。ライブな情報を得るためです。

【ポイント】こんな先生に託してほしい
○自分の技量を自慢せず、教え子を称える発言が多い。
○訊いていないのに、「遅れる子の支援」について熱弁。
○自校愛があふれて、「ぜひ、我が校へ!」と、歓迎感に満ちている。
○受け売りや大言壮語を控えて、アピールは等身大。
○自教科を語りはじめると熱を帯びる。(=仕事への情熱)

気持ちよくお話しいただくための
「オーバーリアクション」

(例えば)パンフレットをめくりながら聞かないように。話者の目を見て対話してください。難しい顔は禁物。笑顔がベストです。コミュニケーションの基本です。ちなみに、話者の「気分がのる」のは少々大げさなリアクションです。

《例》
「へぇ、そうなんですね。知りませんでした!」
「それは素晴らしいですね!うちの子もそのように育ってほしいです。」
「貴重なお話をおうかがいできました。相談したかいがありました!」

私学教諭は強固な信念に賛同する集団。学校は先生方の基本的な方向性は統一されているはずです。優れた学校は、先生のムードが似ています。「個別相談の先生は温かかったけど、受け付けの先生は冷たい」という学校はちょっと心配ですね。

在校生インタビューは
ポジティブクエスチョンで

在校生にインタビューできる好機があるとしばしば「イジメはない?」などなど、ネガティブな尋問を浴びせてしまいます。生徒にとっては「そう追及されても…」です。子どもたちには、ポジティブに語りかけましょう!なお、一人に問いかけるより集団に投げかけた方が、生徒同士が議論して白熱します。

《例》
「毎日の学園生活は楽しい?」
「この学校を選んで正解だった?」…これで十分では?
「カフェテリアは何が美味しい?」
「一番好きな場所(施設)は?」…好き」は答えやすい。
「オススメのクラブは?」
「学校のアピールポイントは?」…「推奨」を引き出すと盛り上がる。


最後に受験生ご家庭が大枠の問いで
広範な回答を引き出しましょう。
心得るべき「ムーヴ的掟」を
再確認しておきたい。

保護者の見栄を拭い去ろう

 入試偏差値や大学合格実績による「ランキング」が保護者の皆さまの心を支配する。私も受験を経た。当時の心情を顧みて、保護者の皆さまの「見栄」が先走ってしまう心情は理解したい。
 しかしながら、近所や親族に誇るために受験させるワケではない。そもそも「謙虚」を重んじる我が国では「見栄をはる」
「自慢する」は、邪心のあらわれとされる。純真な子どもたちに見抜かれてしまえば、後の自立期(≒反抗期)が怖い。幼いころは「ママのため♪」と健気だが、今後は「母ちゃんのせい!」と手厳しいぞ。
 上位校に合格できる学力は称賛しててあげるべきだが、不用意なエリート意識を植え付けてはならない。たとえ、「第三志望校」であっても、がっかりするなかれ。12歳はゴールではない。スタートラインだ! 未来、立派な大人を育て上げれば、大声でアピールしなくても、皆が盛大な拍手を送るだろう。


出願校は「本人が選んだ」との
ストーリーを演出しよう!

 出願校を決めるのは保護者の責任。12歳では大海を知らず、将来ビジョンを描くのは無理。でも、「あなたは◯◯中学校!」と頭ごなしの強制はやめよう。塾講師との密室決定もN G 。お子さんとの対話を密に、和やかに。実際は「説得」だが、リクエストを聞いてあげる演出が不可欠だ。向かう先が、本人の心が躍るステージであれば、毎朝、喜び勇んで駆け出すだろう。


 「ゼッタイにイヤだ!」と、かたくなに拒絶するのなら、深刻な懸念・不満を抱いているはず。無理強いせずに見直そう。子どもたちが嫌がる理由は、「人間関係にまつわる心配事」「自信がないための自己防衛」「とにかく親への反抗」などが推測される。いずれも、心理の奥底に関わるため、初期処置を誤れば、やがて大病に至る。慎重かつ賢明な対処を願う。


ムーヴからのお願い

 学校滞在時は明らかなマナー違反はNGです。会の最中にスマートフォンでSNSに繋ぐなどなど、論外です。先生方のお話に静粛に耳を傾けてください。遅刻や途中退出は、できる限り避けてください。また「ここは滑り止めだから」と見下すような態度は厳禁です。学校はお店ではありません。ぞんざいな「お客さま気分」は慎んでください。


 キャンパスでの写真や動画の撮影は、各校のルールに厳格に従ってください。特に文化祭・体育祭時は要注意。安全管理のために、在校生保護者以外の撮影が禁じられている学校もあります。
 また、大半の学校は自家用車で来校できません。子どもたちと同じく、通学路を歩ん
でください。家から学校までの道のりは大切な調査ポイントです。


個 別 相 談
こんなお母さまは嫌われる!

時間を気にかけず必要以上に長居する。
知ったかぶりで上から目線。(相手は専門家ですよ!)
パンフレットを読めばわかる初歩質問を繰り返す。
先生の学歴など、プライベートな質問をする。
「合格できるでしょうか?」と懇願するような発言ばかり。


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学んでおこう

現在は教育改革期。2020年の大学入試改革もその一環として捉えられています。今、日本の学校教育はどこに向かっているのか。私学の先生方のメッセージを正しく理解するために、「基礎学習」が不可欠です! 巷の噂に翻弄されないよう、まず、文部科学省の発信情報を重んじてください。

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