2022年度入試から 2023年度入試を予測する③~神奈川県(受験情報)ムーヴ編集部

2022/10/23
2022年度入試から2023年度入試を予測する③~神奈川県
公立高校―学力検査の合格平均点はダウン

応募者は増加、平均応募倍率は微減
 2022年度は公立中学卒業予定者数が約2,000名増えたので、公立高校の応募者数も約800名増加。人口増に対応した臨時定員増も800名だったので、平均応募倍率は1.18倍から1.17倍にダウンした。人気の二極化傾向が続いているため、定員割れ追加募集数は1,500名を超え、前年より500名近く増えている。
 横浜翠嵐が2年連続で応募者を増やし、県内最多の804名を集め、応募倍率も2.25倍と普通科では唯一の2倍台だった。

2年連続上昇から下降も40点台の科目はなし
 2022年度は神奈川県ではマークシート方式を一部導入してから6年めの入試となった。
 合格平均点の5科合計点は2年連続で下降した後、2年連続で上昇していたが、2年前とほぼ同じ点数に戻った。264.8点→263.0点→288.3点→301.2点→287.6点と推移していて、昨年の高い平均点が目立つ。コロナ禍で一斉休校や制限が多かったことへの配慮もあって易しい出題が増えていたのだろう。
 国語が65.6点→59.1点→69.1点→65.7点→61.3点と2年連続でダウンしたものの60点台を維持。3年前に40点台から60点台に急上昇した理科は45.3点→61.3点→55.9点→50.1点→58.9点と3年ぶりに上昇した。社会は41.8点→42.5点→58.2点→72.6点→62.4点と昨年の急上昇から10点以上ダウンしたものの60点台だった。数学も56.0点→50.3点→55.7点→58.2点→52.9点と下降した。英語は56.1点→ 4 9 . 8 点→ 4 9 . 4 点→ 5 4 . 6 点→ 5 2 . 1 点とわずかに下降した。正答率10%未満の小問は数学の3問しかなかった。
 50点台前半となった数学と英語は新学習指導要領で新たな単元の増加が顕著なため、今後も易しくなるとは考えにくい。特に英語は学習範囲が最も拡大しているため、注意が必要だ。

横浜国際も自己表現検査・共通問題実施校に
 2020年度に県作成の共通問題と共通選択問題が出題される記述型の自己表現検査実施校が7校から17校に増えた。いずれも学力向上進学重点校やエントリー校で実施され、2022年度はそれまで独自問題だった横浜国際が共通問題実施校に加わった。

おもな特色検査実施校
【記述型自己表現】
横浜翠嵐・湘南・柏陽・厚木・希望ケ丘・横須賀・平塚江南・横浜緑ケ丘・川和・多摩・光陵・横浜平沼・鎌倉・小田原・大和・相模原・茅ケ崎北陵・横浜国際
(国際科・国際バカロレアは英語記述問題も含む)
(以上18校が共通問題・共通選択問題)
市立横浜サイエンスフロンティア(学校独自作成)
【グループ討論自己表現】
神奈川総合(舞台芸術科)
(実技検査として、身体表現・演技表現もあり)
私立高校ーコロナ対策で急増した書類選考が微減

応募者は増加、書類選考が過半数を占める
 書類選考は神奈川県内私立高校で実施されている独特の入試制度で、内申点が基準を超えていれば書類を提出するだけで学力検査を受けずに合格できる。神奈川県では私立高校の一般入試と公立高校の入試日との間が短いことや、元々内申基準に達していれば不合格にならない入試が多かったこともあって、年々導入校が増えていた。そこにコロナ禍である。高校に足を運ばなくていいのだから感染する心配がない。増加傾向だったものの一気に書類選考型入試実施校が急増した。
 2022年度は入試当日、高校に足を運ぶことが条件となった書類選考型が増えたものの、会場で作文や面接を行う程度で合否にはほぼ影響がないままだった。
 2年前に1万1,000名台から約2万8,300名に増えたが、今年は昨年より微減の約2万7,800名が書類選考に応募した。推薦、一般、オープンとも応募者を増やし、県内私立全体でも約5万1,800名から5万4,500名に増加した。増えた応募者のうち、書類選考が半数以上を占めている状況は続いている。
 事前に行われていた進路希望調査でも都内より県内私立を志向する傾向が見られたが、その通りの応募動向となった。

書類選考の急増が公立受験を後押し?
 内申点で決まる書類選考では通学している中学の成績評価が甘ければ基準を超えやすくなるため、高い水準を要求されるケースが少なくない。しかし、コロナ感染防止のため、導入校が急増し、基準も拡大傾向にあるといえる。
 私立高校の学力検査対策をする必要のない書類選考のおかげで公立高校入試対策に集中しやすくなった受験生も増えたのだろう。横浜翠嵐をはじめとした学力向上進学重点校や重点校エントリー校の安定した人気を書類選考が支えているようにも見える。
 書類選考の場合、地域による学力格差が反映されないという問題がある。たとえば、同じ模擬試験の偏差値60の生徒であっても通っている中学校によって内申点が大きく異なることがあっても不思議ではない。しかし、神奈川では偏差値を使用することはなく内申点で決まるため、入学直後から学力差の大きい私立高校もあるのが実情だ。書類選考をやめるには至らないものの学力検査の重要性を指摘する声も一部で上がっている。
 2023年度入試も大きく変わらないと思われるが、一気に広がりを見せた書類選考型入試については少し変更される可能性もあるようだ。

桐蔭学園が4千名超え県内私立で応募者数最多
 2 0 2 2 年度も県内私立で最も応募者を集めたのは桐蔭学園だった。2018年度に男女別学から共学化して以来、増減を繰り返していたが、今年度は800名近く増やし2年連続増の4,126名、1都3県の私立高校で唯一4,000名を超えた。進学校としての知名度も高く、県外からの応募者も集めているためだ。厚木エリアにある向上が2,841名の応募者数で2位。桐蔭学園と1 , 3 0 0 名近く差があるものの、同校も2年連続で増加した。小田原エリアの相洋がわずかに応募者を減らしながら3位をキープ。以下、柏木学園、横浜隼人、光明学園相模原、湘南工科大学附属と続く。いずれも書類選考型入試実施校が並ぶ。

目立つ大学付属校の応募者増
 大学入試制度の大幅な変更は先送りされたが、制度変更への不安感から大学付属校を希望する傾向は強い。2022年度は慶応義塾、中央大学附属横浜、法政大学第二、法政大学国際、東海大学附属相模が応募者を増やした。日本女子大学附属、日本大学、日本大学藤沢は減少した。日本大学藤沢は書類選考をやめたことで敬遠傾向がはたらいたようだ。
 付属校に入学すれば必ず併設大学に進学できるとは限らないが、一般枠よりずっと広いのは間違いない。大学入試対策に追われる不安が少ない分、のびのびできる魅力を感じる向きもあるだろう。今後も付属校人気は続きそうだ。

情報を集め、様々な入試スタイルの活用を
 東京と同様、神奈川の私立高校入試は1月22日の推薦入試からスタートする。第一志望者のみが対象だが、私立第一志望でも2月10日から開始する一般入試で受験するケースが少なくないのも神奈川の特徴だ。公立第一志望で私立を併願する場合も一般入試を受験することになる。
 より多くの受験生が応募できるように一般入試を複数回行う私立高校もある。志望順位によって基準は違うものの、神奈川では調査書点が合否を左右するケースが多い。また、調査書点に関係なく学力検査結果によって合格を出すオープン入試もある。オープン入試には特待生選抜を兼ねたものがあり、推薦や一般での合格を留保した上でチャレンジできる場合がある。一方、特待生選抜で一般枠でスライド合格を出すところもある。複数の学科やコースのある私立高校では、受験した学科では合格しなくても別の学科やコースでスライド合格を出すこともある。高校によって違うので情報収集が重要だ。

2023年度 神奈川県内私立高校・主な変更点
聖ヨゼフ学園 女子校から共学化
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