一般入試は増加、推薦入試は減少
毎年12月に行われる校長会志望校調査時点で都立高校第1志望の割合は71.1%→68.2%→66.9%→65.6%→64.4%→63.9%と減り続けている。私立高校を志望する割合も大きくは増えず、全日制高校より通信制高校を志望する割合が増加した。
志望率は下がっているものの、2022年度は久しぶりに中学卒業予定者数が増え、一般入試の都立高校応募者数も増加した。男子が6.2%増の2万1,431名、女子は2.3%増の2万58名が応募、人口増に対応して募集数も臨時で増やしたものの平均応募倍率は昨年の1.35倍から1.37倍に上昇した。平均実倍率も1.42倍→1.38倍→1.35倍→1.34倍→1.32倍→1.36倍と4年連続の減少から久しぶりにアップした。
推薦入試では集団討論の中止もあって6年連続減少から昨年増加に転じたものの2022年度は再び減っている。平均応募倍率は2.55倍→2.78倍→2.54倍と推移し過去最低となった。
人気校では高倍率を維持する一方、定員割れ校も多く、2次募集数は1,138名→1,647名→1,443名→1,437名→1,877名→2,289名と2年連続で増加、5年前の倍の2千名になってしまった。
一方、都内私立高校では応募者数を約9万8千名から約10万1千名に増やしている。推薦は少し減らしたものの一般の増加が目立った。通信制を希望するケースも増え、都立離れが続いている。
都立希望が減り続け、私立希望が応募者数を維持している主な理由は以下の3点。
①学費無償化政策で公私間学費格差が縮まった。
②地方創生政策により都内23区内の私立大学定員の厳格化で難化、大学付属校もある私立高校への期待感が高まった。
③2021年以降の大学入試改革やコロナ禍でのオンライン授業等による
対応力が公立より私立にありそうだ、と考える受験生・保護者が増えた。
今後も私立優位は続くか
都内在住の場合、授業料軽減助成制度が定着してきた。私立高校に通学している年収910万円未満の世帯では都内私立高校の平均授業料46万9,000円が軽減される。コロナ禍で経済状況の悪化が予想されたが、私立高校では都立ほど応募者を減らしていない。今後もこの傾向は続きそうだ。
2022年度以降も全体的には私立優位のイメージが強い。2021年春から名称が変わった大学入学共通テストでは当初予定されていた大幅な変更は先送りされ、英語検定の導入や記述試験の導入は実現困難という判断で見送られた。とはいえ、国公立大の二次試験や各私立大の入試では一部導入が進められているため、従来の知識重視から思考力・判断力・表現力を重視しようという動きがなくなったわけではない。このような変化にいち早く対応できる柔軟性が発揮された私立高校への評価が高まっているといえる。
コロナ禍での対応の違いによって大学入試でも人気動向の変化が見られた。誰も体験したことのない状況下、安全志向が強まった中、進学実績を伸ばしている私立高校や大学付属校の人気は今後も高まりそうだ。
学力検査、平均点合計は上向く
都立高校入試では2016年度からマークシート方式を一部導入した。5科平均の合計点は302.1点→298.1点→323.4点→307.5点→307.3点→282.3点→299.5点と2021年度が最も低く、2022年度は5年前に近い結果となった。
科目別では英語・数学・理科が上昇、国語・社会は下降した。国語が73.9点→69.5点→65.9点→71.0点→81.1点→72.5点→68.8点と2年連続でダウンしたものの5科では最も高かった。英語は57.8点→68.0点→54.4点→54.7点→54.1点→61.1点と昇、4年ぶりに60点台に伸ばした。数学は56.3点→66.5点→62.3点→61.1点→53.3点→59.0点と3年連続ダウンから上昇した。理科も2年連続ダウンから大きく上昇、61.5点→67.1点→53.4点→47.8点→61.4点で3年ぶりに60点台となった。社会は2年連続でダウン、61.5点→52.7点→57.0点→54.6点→49.2点と下降した。ここ4年間で最も低く、5科中でも唯一40点台となった。
2022年度は昨年の平均点の下降の影響もあって全体的には上昇傾向だったが、合計点ではわずかに300点台を切った。
2023年度は英語でスピーキングテストが導入される。昨年に続き、新学習指導要領で教科書が厚くなった分、一気に出題範囲は拡大する。新たに出題される部分は限られるので、過去に出題された入試問題で演習するだけでなく、新たに加わった単元についても演習を重ねておく必要があるだろう。
実倍率の上昇、再び1万名以上が不合格
都立高校希望者は減ったものの、全ての都立高校の人気が下がっているわけではない。応募者の増加により、久しぶりに平均応募倍率が上昇したため、一般入試の不合格者は4年連続減少から増加に転じた。昨年の9,127名から一昨年の10,172名も上回り、10,265名が不合格となった。約3万9千名が受験しているので、4人に1人以上が不本意な結果だったことになる。
定員割れが増加した一方、高い実倍率校に変わりはなく人気の二極化傾向が続いている。全体の平均実倍率が緩和することがあっても、多くの都立高校の実倍率はあまり変わらないだろう。特に難関校・人気校を志望する場合は油断せずにのぞむべきだ。
推薦入試では前年の2.78倍から2.54倍に平均応募倍率が下がったものの高倍率に変わりはない。高倍率への敬遠傾向はあるので応募者数はそう大きく増えないのではないか。推薦入試では学力検査がなく、面接・集団討論、小論文、内申書で総合的に判断される。今後、総合的に合否を判断する割合が増えそうな大学入試制度と重なる部分が少なくない。経験を積む意味でもチャレンジする価値はあるだろう。