2022年度入試から 2023年度入試を予測する①~東京都(入試情報)ムーヴ編集部

2022/10/07
2022年度入試から2023年度入試を予測する①~東京都
都立高校―続く都立志向の減少傾向

一般入試は増加、推薦入試は減少
毎年12月に行われる校長会志望校調査時点で都立高校第1志望の割合は71.1%→68.2%→66.9%→65.6%→64.4%→63.9%と減り続けている。私立高校を志望する割合も大きくは増えず、全日制高校より通信制高校を志望する割合が増加した。
 志望率は下がっているものの、2022年度は久しぶりに中学卒業予定者数が増え、一般入試の都立高校応募者数も増加した。男子が6.2%増の2万1,431名、女子は2.3%増の2万58名が応募、人口増に対応して募集数も臨時で増やしたものの平均応募倍率は昨年の1.35倍から1.37倍に上昇した。平均実倍率も1.42倍→1.38倍→1.35倍→1.34倍→1.32倍→1.36倍と4年連続の減少から久しぶりにアップした。
 推薦入試では集団討論の中止もあって6年連続減少から昨年増加に転じたものの2022年度は再び減っている。平均応募倍率は2.55倍→2.78倍→2.54倍と推移し過去最低となった。
 人気校では高倍率を維持する一方、定員割れ校も多く、2次募集数は1,138名→1,647名→1,443名→1,437名→1,877名→2,289名と2年連続で増加、5年前の倍の2千名になってしまった。
 一方、都内私立高校では応募者数を約9万8千名から約10万1千名に増やしている。推薦は少し減らしたものの一般の増加が目立った。通信制を希望するケースも増え、都立離れが続いている。
 都立希望が減り続け、私立希望が応募者数を維持している主な理由は以下の3点。
 ①学費無償化政策で公私間学費格差が縮まった。
 ②地方創生政策により都内23区内の私立大学定員の厳格化で難化、大学付属校もある私立高校への期待感が高まった。
 ③2021年以降の大学入試改革やコロナ禍でのオンライン授業等による
  対応力が公立より私立にありそうだ、と考える受験生・保護者が増えた。

今後も私立優位は続くか
 都内在住の場合、授業料軽減助成制度が定着してきた。私立高校に通学している年収910万円未満の世帯では都内私立高校の平均授業料46万9,000円が軽減される。コロナ禍で経済状況の悪化が予想されたが、私立高校では都立ほど応募者を減らしていない。今後もこの傾向は続きそうだ。
 2022年度以降も全体的には私立優位のイメージが強い。2021年春から名称が変わった大学入学共通テストでは当初予定されていた大幅な変更は先送りされ、英語検定の導入や記述試験の導入は実現困難という判断で見送られた。とはいえ、国公立大の二次試験や各私立大の入試では一部導入が進められているため、従来の知識重視から思考力・判断力・表現力を重視しようという動きがなくなったわけではない。このような変化にいち早く対応できる柔軟性が発揮された私立高校への評価が高まっているといえる。
 コロナ禍での対応の違いによって大学入試でも人気動向の変化が見られた。誰も体験したことのない状況下、安全志向が強まった中、進学実績を伸ばしている私立高校や大学付属校の人気は今後も高まりそうだ。
  
学力検査、平均点合計は上向く
都立高校入試では2016年度からマークシート方式を一部導入した。5科平均の合計点は302.1点→298.1点→323.4点→307.5点→307.3点→282.3点→299.5点と2021年度が最も低く、2022年度は5年前に近い結果となった。
 科目別では英語・数学・理科が上昇、国語・社会は下降した。国語が73.9点→69.5点→65.9点→71.0点→81.1点→72.5点→68.8点と2年連続でダウンしたものの5科では最も高かった。英語は57.8点→68.0点→54.4点→54.7点→54.1点→61.1点と昇、4年ぶりに60点台に伸ばした。数学は56.3点→66.5点→62.3点→61.1点→53.3点→59.0点と3年連続ダウンから上昇した。理科も2年連続ダウンから大きく上昇、61.5点→67.1点→53.4点→47.8点→61.4点で3年ぶりに60点台となった。社会は2年連続でダウン、61.5点→52.7点→57.0点→54.6点→49.2点と下降した。ここ4年間で最も低く、5科中でも唯一40点台となった。
 2022年度は昨年の平均点の下降の影響もあって全体的には上昇傾向だったが、合計点ではわずかに300点台を切った。
 2023年度は英語でスピーキングテストが導入される。昨年に続き、新学習指導要領で教科書が厚くなった分、一気に出題範囲は拡大する。新たに出題される部分は限られるので、過去に出題された入試問題で演習するだけでなく、新たに加わった単元についても演習を重ねておく必要があるだろう。

実倍率の上昇、再び1万名以上が不合格
 都立高校希望者は減ったものの、全ての都立高校の人気が下がっているわけではない。応募者の増加により、久しぶりに平均応募倍率が上昇したため、一般入試の不合格者は4年連続減少から増加に転じた。昨年の9,127名から一昨年の10,172名も上回り、10,265名が不合格となった。約3万9千名が受験しているので、4人に1人以上が不本意な結果だったことになる。
 定員割れが増加した一方、高い実倍率校に変わりはなく人気の二極化傾向が続いている。全体の平均実倍率が緩和することがあっても、多くの都立高校の実倍率はあまり変わらないだろう。特に難関校・人気校を志望する場合は油断せずにのぞむべきだ。
 推薦入試では前年の2.78倍から2.54倍に平均応募倍率が下がったものの高倍率に変わりはない。高倍率への敬遠傾向はあるので応募者数はそう大きく増えないのではないか。推薦入試では学力検査がなく、面接・集団討論、小論文、内申書で総合的に判断される。今後、総合的に合否を判断する割合が増えそうな大学入試制度と重なる部分が少なくない。経験を積む意味でもチャレンジする価値はあるだろう。
私立高校―大学付属校・進学校を中心に私立人気続く

都民の私立高校の学費無償化対象が拡大
 都立高校のページでも触れたが、2020年度から都内在住の世帯年収910万円未満を対象に、都内の私立高校平均授業料年間46万1,000円までの助成金が支給されるようになった。2022年度は助成金額が46万9,000円に増額された。条件は都内在住であることだけで、都内私立はもちろん都外私立に通学していても対象となる。
 経済的な理由で都立第一志望だったご家庭でも、私立を併願校として視野に入れたり、第一志望にしたりできるようになった。実際、私立志望の割合は増え続けていて、「学費が高い」という理由で私立を敬遠するご家庭の減少がうかがえる。

コロナ禍後の入試はどうなった?
 新型コロナウィルスの流行は受験生の動向にも影響を与えた。一斉休校期間中のオンライン授業の充実等の対応力の高さが評価され、公立より私立を志向する傾向は強まった。
 都内に限ったことではないが、コロナ禍で来校型の説明会や個別相談会は人数制限をし、インターネットでの公開を増やす等の対応をした高校が少なくなかった。「その学校に行って情報を集めたい」と思ってもすぐ締切になってしまい苦労した受験生や保護者は今も多い。そんな中、説明会の回数を増やし「学校を直接見たい」という声に応えようとした私立高校は人気が上昇、応募者を増やすケースが増えていた。一方、今年はコロナ禍前の人気校に応募者が戻った状況も見られた。

2022年度の私立は推薦が微減、一般は増加
 2022年度はこれまで増えていた推薦の応募者が微減、一般が約3,500名増え、全体で約3,000名増の約10万1千名が都内私立に応募している。他エリアからの応募者が多い23区内では一般が増え、多摩地区では推薦が増加した。都心部では私立を複数受験する割合が少し増えたのかもしれない。
 コロナ禍2年目の2022年度は昨年減少傾向が見られた大学付属校や難関校でも応募者増が見られ、朋優学院、昭和第一学園、國學院、関東第一、拓殖大学第一、早稲田大高等学院が2千名を超える応募者を集めた。中でも朋優学院は神奈川からも応募者を多く集め、3千名を超え都内最多となった。

2023年度以降の私立入試
 都立と同様、私立でも人気の二極化傾向は強い。集まる高校にはより多く集まっている。しかし、今年の入学者数が定員を超過した人気校では基準を上げ合格者を絞らざるを得ない。
 都内私立の場合、エリアによって基準設定が異なる。近隣他県からの応募者も集めている影響だ。埼玉に近ければ公開模試の偏差値、千葉・神奈川に近いと内申点が重視されることが多い。また、検定試験の取得級をはじめ、部活動や生徒会活動、出欠状況などを反映させる加点制度実施校も少なくない。
 このような入試基準に関する情報はホームページで紹介されていないことが多いので、高校に足を運んで直接聞いてくることが重要だ。予約が取れずなかなか行けない場合には中学校や塾の先生に相談するのもいいだろう。

改革後の大学入試に向けての学校選び
 中3時点で大学進学希望者が60%を超えている中、大学入試改革は気になるところだ。改革は先送りされたものの制度変更への対応が大学によって様々で、詳細について不確定な部分も少なくない。そのため、大学付属校のほうが大学進学しやすいと考える受験生や保護者は少なくないだろう。
 大学付属校を希望する場合、併設大学への進学率や希望する学部・学科の有無なども知っておく必要がある。また、付属校ではない高校でも制度変更の影響を受けない学内大学推薦枠が注目を集めるかもしれない。
 一連の改革の意図のひとつは変化する社会で求められる人材の育成にある。どこの大学を卒業したかではなく、大学で何を学び、それをどのように社会で活かしていくのかが問われている、と考えるべきだ。そのためにふさわしい環境としての学校選びという視点を持つべきだろう。
 都立と私立のどちらが有利なのか単純に結論できないが、同じくらいの難易度で大学合格実績を比較すると公立より私立のほうが優位に見えることは珍しくない。制度変更後への対応と合わせ、情報を収集したい。

2023年度 都内私立高校・主な変更点
共栄学園…特進コース選抜クラス新設
自由ヶ丘学園…男子校から共学化
大東学園…福祉コース募集停止
東京女子学園…女子校から共学化、芝国際に校名変更
新渡戸文化…スポーツコース募集停止             
日本音楽…女子校から共学化、品川学藝に校名変更、普通科を新設「リベラルアーツ」と「eスポーツエデュケーション」の2コース制、音楽科は4コースから2コース制へ
明治大学付属中野…推薦入試を導入
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