いま男子校、女子校は どうなっているか?(受験情報)ムーヴ編集部

2022/09/25
〜保護者の知らない別学校の世界〜
いま男子校、女子校はどうなっているか?
ここ数年、首都圏では共学化する学校が多数に上っています。そうした中でも確固たる存在価値を示している男子校、女子校がたくさんあります。これから受験校選びの時期に入るわけですが、この機会に一度男子校、女子校のよさについて考えてみましょう。

別学校の存在は地域差が大きい
 中学受験で男子校を選ぶ、女子校を選ぶといってもお住まいの地域によって事情は大きく異なるので、まずそこからお話ししましょう。
 男子校ですが、千葉にはありません。埼玉も3校だけ。多数存在するのは東京、神奈川だけです。女子校も似たようなもので、千葉は2校だけ、埼玉も3校だけで、東京、神奈川にはたくさんあります。
 ですから、千葉の男子は男子校に進みたいと思ったら他都県の学校を受験するしかなく、埼玉も男子校は西部に偏っているので、他の地域の受験生は共学校を選ぶケースが多くなっています。
 女子も千葉の2校はともに市川市と偏っています。千葉、埼玉で共学校の受験生が多くなるのはこうした地域事情があるのです。一方東京、神奈川には男子校、女子校の伝統校が数多くあるので、必然的に入試でも別学校が人気を集めています。
いまどきの男子校事情
ソフト化が進む男子校
実は私はこの5月から7月にかけて35校もの私立中学を訪問しました。そこでの経験から最近の男子校の様子をお話ししましょう。もちろん学校によって校風は違うので皆が皆こうだということではありませんが、男子校を選ぶ場合のご参考になるかと思います。
◆校舎がきれいなまま
以前は男子校を訪れると、壁の高いところに(場合によっては天井にも)靴跡がついていることがザラでしたし、ドア、棚などがあちこち壊れているところもありました。新校舎になってもすく汚くなっていたものです。それがいまは新校舎はきれいなままで使われています。
◆球技が苦手
野球部、サッカー部などボールを扱う部の生徒はもちろん得意なのですが、一般の生徒は以前のように子どものころに草野球をしていない子がほとんどなので、体育のソフトボールの授業では「笑ってしまうような珍プレイが続出する」と男子校の先生が語っていました。
◆海辺でスイカ割り
臨海学校の歴史が古い学校で、全員が遠泳をするイメージがあったのですが、そのことを話すと、「泳ぎの得意な子は90分間ずっと泳いでいますが、泳ぎの苦手な子は浜辺でスイカ割りをしていますよ。」という校長の話。鍛えるという方針ではまるでないのです。

男子校ならではの様子
◆縦割りの組織で先輩・後輩の仲が強固に
運動系で言えば、体育祭のチーム構成が学年を縦にまたがる組織にしていることが多いのも男子校ならではです。先輩・後輩という縦の関係に男子はなじむようで、また勇ましい競技種目があったりもします。ただ、全国レベルの強豪部活があるような学校では、本気を出すとケガにつながるので、そうした学校はイメージとは逆にソフトな種目ばかりになったりしています。
◆卒業後も関係が続く
卒業後も部活単位ですぐに集まる団結力などは、青春時代に苦楽をともにした仲間ならではと言えるでしょう。
◆マイナーな部活も存在
今回も数校の男子校で、校舎の屋上から垂れ幕がかかっているのを目にしました。「〇〇部、全国大会出場」「〇〇部、関東大会出場」と記されているのです。「すごいですね」と質問していくと、その競技の部活があるのはその都県で2校だけ、というケースがあり、すぐに全国大会出場となるのです。
例えば首都圏ではアイスホッケー部、相撲部などはごくわずかな学校にしかありません。相撲部がある学校には立派な土俵がありましたが、アイスホッケー部などは遠くのリンクまで練習に行っていました。こんな珍しい部が存在できるのも男子校ならではです。
◆「専門家」的先生がいる
伝統校には、自分の専門分野にのめり込んでいる先生が結構います。そのことは、生徒に大学受験に必要なことだけではなく、「専門分野の研究の面白さ」を伝えられることにつながります。それが生徒の将来の進路に影響するので、とても重要なことだと思います。
◆社会人の卒業生も応援
夜間強歩大会、臨海学校などの校外行事に先輩たちがサポートに駆け付ける伝統も男子校ならではと言えるでしょう(巣鴨が有名)。
◆サイエンス系施設が充実
男子校には以前から独立した「理科館」という施設を有するところがあります。近年これを海城のように「サイエンスセンター」として素晴らしい施設につくりかえるところも出てきています。理科教育に力を入れている点も男子校らしいところです。

オタクでいられる
男子校のいいところは何といってもオタクでいられること。異性の目がないことで、本当の自分でいられる時間が長いことはとても過ごしやすいと言えます。共学校だと、好きなことを突き詰めると、『変わっている』『キモイ』と思われるのではないか……と不安になるものですが、男子校はその心配がありません。互いに差異を認めあって生活しているという面があります。
いまどきの女子校事情
ふつうにおかわりする女子
今回お会いした校長の中に、長いこと共学校に勤務していて今春女子校の校長に就任された方がいました。で、「外の目から見て、女子校のどんなところがいいですか? 」と尋ねました。するとまず、「華道や茶道の授業があることは、女子校らしくとても素晴らしいと思いました。」と答えられました。その後で、4月の東北旅行にもついて行った話をされ、「女子がご飯をおかわりしていたことがとても新鮮でした。共学校の女子は、男子の目を気にしておかわりはまずしません。」男子の目を気にせず自然に振舞える。これこそ女子校の素晴らしい点ではないでしょうか。

学年の団結力がすごい
女子校の運動会は男子校と異なり、学年対抗のところが多いです。男子の縦のつながりに対し、女子は横の結びつきが強いので、学年ごとに競い合うようにしているのです。中1のとき赤組なら6年間赤組となり、卒業後も第17代「赤組」というように呼ばれたりします。だいたい高3が優勝することが多く、6年かけての団結心の向上と努力の蓄積の成果と言われています。実際ある女子校の体育祭を見学したのですが、ものすごい迫力でした。“荒っぽい”と言っては言い過ぎかもしれませんが、これも男子の目を意識して「かわいらしく」振る舞う必要がないからでしょう。

創立者のお墓を訪ねる
男子校では寡聞にして耳にしていませんが、女子校は明治時代に創立者が女性の自立を願って創立したケースが多く、創立者の精神の継承を大切にしています。そのことの反映でしょう、創立者のお墓を訪ねる学校があります。
実践女子学園は下田歌子の生誕地岐阜県・恵那市の岩村を訪ね、現地の同年代の生徒と交流します。日本女子大附属は創立者成瀬仁蔵のお墓(東京の雑司ヶ谷霊園)を訪ねます。

女子校ならではの施設
男子校は理科施設や武道場以外はそれほど固有の施設はありませんが、女子校は女子向けの施設がそろっています。たとえば、調理室・被服室など家庭科関係の教室が充実していたり、茶室や礼法室があったり、楽器の独奏室があったりします。
学校によっては、おしゃれなカフェテリアがつくられ、メニューにはデザート類が充実していたりといったことも。また、校舎のデザインも、女子校はいかにも女子校らしい淡い暖色系の色を基調として使っていたり、トイレや洗面所の設備に大変気を使っていたりします。

先生が女性の人生を意識している
これは少し私の個人的な感覚になるのですが、男子校の先生は(保護者も含めて)ほとんどが難関大学進学→大企業という安定したルートを漠然と描いているように感じます。それに対して女子校の先生は(保護者も含めて)社会ではまだ男女差別があるので、どう働いていくか、どう生きるか在学中から結構考えています。厳しいからこそ、学校も、自校の生徒が自分の人生を自分の力で切り拓いていけるよう応援しようという気持ちが強くなっていて、そのことがまっ直ぐに伝わってくるのです。
70年、100年と長きにわたって女子教育に専念してきた学校ほど、女子の特性を踏まえ、どう育てることがその子の人生に光を当てることにつながるかわかっています。女子教育に特化してきた学校、先生の力はあなどれないなといつも感じています。
※男子校も女子校も保護者の時代とはずいぶん変わっています。総じていえることは、異性の存在が気にならないタイプ、異性の友だちが多いタイプは共学校でもいいでしょうが、お子さんが男子だけ、女子だけのほうがのびのびして興味・関心を伸ばせるタイプならば別学校がお勧めです。
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