2022年中学入試はどう行われたか(受験情報)ムーヴ編集部

2022/08/07
2022年中学入試はどう行われたか
安田教育研究所 安田 理
全体の状況
〈3模試とも受験者数は増と推定〉
どのくらいの人が中学受験をしているか、という数字は実は公的な機関はどこも出していない(東京都教育委員会の場合は、小学6年生がどのような学校種<公立、国立、私立、公立中高一貫校>に進学したかという数字を12月ごろに公表)。で、中学受験者数は、大規模な模試を行っている会社がそれぞれに推定して出している。
〇首都圏模試 1050名増で51100名
〇日能研 700名増で62400名(公立中高一貫校を含む)
〇四谷大塚 1500名増で53500名
 日能研は減っている公立中高一貫校を含んでいるので増加幅は小さいが、首都圏模試、四谷大塚とも前年より増加幅は大きく出している。
〈増えた地域、増えた学力層は?〉
〇東京23区と埼玉で大幅増加
東京2 3 区が5 . 7%、多摩地区が-0 . 2%、神奈川が1.7%、千葉が7.4%、埼玉が12.6%。
 埼玉は全体的に増えているが、県内の受験生が増えたというより、他都県からの受験生が増加している。特に栄東は、コロナ前は4回受験できたものが、昨年はコロナ対応で受験機会が3回に減っていたが、今年は再び4回受験できるようにしたため2000名も増加。
〇難関校・上位校は必ずしも増えていない
 受験者は大きく増えているにもかかわらず、難関校・上位校は必ずしも増えていない。チャレンジをしない受験というのが、去年と今年と続いた動向と言える。
 2022年度入試を追いかけていて気が付いたことを取り上げてみる。出願状況を見ていた時に、もっとも易しい学校群の第1回入試の多くが前年より出願者数を増やしたことに気が付いた。コロナの感染を心配して、受けられるときに受けておこうという判断をしたということだ。
〇すそ野の拡大
 コロナ禍における対応の公私の差が盛んに報道されたことでオンライン授業の有無など、わが子の人生が不利になることは避けたいと、急遽私立受験に向かった層が一定数いたと思われる。時間がないから、当然易しい学校に向かうわけである。
 例年だと苦戦が避けられない学校が率ではかなりアップしたことが顕著な動向であった。都県によって状況は異なるが、2022年度入試の受験者増の要因の一部にはこうしたことがある。
付属校志向は止まる
〇GMARCH系はほとんどが減
 付属校は、わかりやすく増加校と減少校にまとめて分けると、
 早慶は共に3校中2校が増え、明治系は3校中2校が減少、青山学院系は3校とも減少、立教系は4校とも減少、中央系は2校とも増、法政系は2校とも減だった。学習院は女子が増えて男子が減。つまりGMARCHの付属は、減少の方が圧倒的に多くなっている。
 前年大半が増加していた日本大系も減少校のほうが多くなり、東海大系は3校中2校が増えている。このように付属校全体を見ると、一時ほどの付属校志向ではなくなっているというのが大きな特徴と言える。
そのほかの動向は?
〇コース制に見られた現象
・上位コースが増加、下位コースが減少
 東京都市大学付属、淑徳、八王子学園八王子、安田学園など、学力別コースの代表的な学校で、上位コースは増加しながら下位コースは減少しているケースが目立った。下位コースに入学する意味を疑問視か。
・サイエンス系コースが注目される
 教育内容でのコースと言えばグローバル系が多かったが、ここへきてサイエンス系コースも出願者数を増やしている。
 今回のコロナ禍で、日本のデジタル化への立ち遅れが非常にはっきりした。これから何十万人単位でIT人材が不足してくると言われている。保護者はこうしたこれからの社会の動きについて非常に敏感である。そうした背景がサイエンス系コースの選択につながっているとみていいだろう。
 大学はすでに理工系にシフトしている。今年、奈良女子大が工学部を開設したが、来年以降もお茶の水女子大に共創工学部、一橋大にソーシャル・データサイエンス学部、共立女子大に建築・デザイン学部、神奈川大に化学生命学部と情報学部、北里大に未来工学部といった具合に続々と誕生する。これは同時に高校生の進路先として理工系にチャンスが広がるということでもある。
〇近年女子校から共学化した学校が軒並み好調
 例えば開智日本橋、かえつ有明、品川翔英、広尾学園小石川、文化学園大杉並、宝仙学園、目白研心、八雲学園、横浜創英など。
これを「共学化で人気に」と捉えるのではなく、
・先生たちのやる気
・多様な人材が混在することの柔軟性、パワー
と捉えるべきだろう。
〇高大連携が多い学校が人気
 付属校志向は止まったが、その一方で、高大連携に力を入れている学校が人気を集めた。例えば麹町学園女子、玉川聖学院、捜真女学校、横浜女学院、順天など。
〇堅実な学校選択
 リモートワークで家にいる時間が増えてデータをしっかり確認できたからだろう、着実に伸びている学校を選択する保護者が増えている。
 例えば成城、田園調布学園、富士見、三輪田学園、駒込、神奈川大附、関東学院など。
最後に、受験生、保護者の学校選びの特徴は?
〇受験生の学校選び
・先輩(在校生)が優しそう 
・やりたい部活がある
〇保護者の学校選び
・本人にとって楽しく、充実した6年間であってほしい
・次の時代を生き抜くスキルを付けてほしい  ◇でも『進路保証』もほしい
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