書類選考が急増、一般入試応募は激減
新型コロナウイルス感染防止のため、試験日当日に高校へ足を運ばなくてもいい書類選考導入校が拡大、応募総数も前年の1万1,000名台から約2万8,000名となり、2.5倍に増えた。対照的に一般入試は3万1,000名から1万3,000名台と半分以下に減少。全体の応募数も2,000名近く減っている。
書類選考は神奈川県内私立高校で実施されている独特の入試制度で、内申点が基準を超えていれば書類を提出するだけで学力検査を受けずに合格できる。試験当日、高校に行く必要もない。神奈川県では私立高校の一般入試と公立高校の入試日との間が短いことや、元々内申基準に達していれば不合格にならない入試が多かったこともあって、年々導入校が増えていた。そこにコロナ禍である。高校に足を運ばなくていいのだから感染する心配がない。一気に書類選考型入試実施校が急増した。
書類選考の急増が公立受験を後押し?
コロナ禍で例年より高めに内申点をつけた公立中学校が少なくなかったのではないか、と一部で推測されている。もしそうなら例年以上に書類選考の合格基準を超えた受験生が多かった可能性がある。
内申点で決まる書類選考では通学している中学の成績評価が甘ければ基準を超えやすくなるため、高い水準を要求されるケースが少なくない。しかし、コロナ感染防止のため、導入校が急増し、内申点も上昇傾向だったことから、例年ならば確約を貰えなかった学力層の受験生でも書類選考を利用できた可能性が高い。コロナ禍がハードルを下げてくれた、ともいえよう。
私立高校の学力検査対策をする必要のない書類選考のおかげで公立高校入試対策に集中しやすくなった受験生が増えたのだろう。神奈川の公立高校の平均応募倍率は上昇している。わずか0.01ポイントの上昇ではあるが、近隣都県の公立高校が軒並み平均応募倍率を下げている中で異なる動きになった理由のひとつに書類選考の急増が絡んでいる可能性はあるだろう。
書類選考の場合、地域による学力格差が反映されないという問題がある。たとえば、同じ模擬試験の偏差値60の生徒であっても通っている中学校によって内申点が大きく異なることはあっても不思議ではない。しかし、神奈川では偏差値を使用することはなく内申点で決まるため、入学後の学力差が大きい私立高校もありそうだ。
公立中学との事前相談を行いながら書類選考を行っていない私立高校は山手学院など4校しかなかった。しかし、書類選考を行わなかった私立高校の応募者が軒並み減っているわけではない。ここまで広がると学力検査の有無が応募者数を左右するとは限らないのだろう。
2022年度入試も大きく変わらないと思われるが、一気に広がりを見せた書類選考型入試については少し変更される可能性もあるようだ。
神奈川で根強い付属校人気
大学入試制度の大幅な変更は先送りされたが、制度変更への不安感から大学付属校を希望する傾向は強い。2 0 2 1 年度は、中央大学附属横浜、日本大学、日本大学藤沢などが応募者を増やした。日本大学系列の2校は2年連続で増加している。また、中央大学附属横浜と日本大学藤沢では書類選考型入試での応募増が目立っている。
慶應義塾、法政大学第二、法政大学国際では難化に対する敬遠傾向がはたらき応募者の減少が見られたものの難度は下がっていない。応募者の減少傾向が続いていた日本女子大学附属は一般入試で専願を導入、応募者を1 0 0名増やした。東海大学付属相模は書類選考を行っていないため、若干応募者を減らしたものの、ほぼ昨年並みで安定した人気だった。
付属校に入学すれば必ず系列大学に進学できるとは限らないが、一般枠よりずっと広いのは間違いない。大学入試対策に追われる不安が少ない分、のびのびできる魅力を感じる向きもあるだろう。今後も付属校人気は続きそうだ。
情報を集め、様々な入試スタイルの活用を
東京と同様、神奈川の私立高校入試は1月22日の推薦入試からスタートする。第一志望者のみが対象だが、私立第一志望でも2月10日から開始する一般入試で受験するケースが少なくないのも神奈川の特徴だ。公立第一志望で私立を併願する場合も一般入試を受験することになる。
より多くの受験生が応募できるように一般入試を複数回行う私立高校もある。志望順位によって基準は違うものの、神奈川では内申点が合否を左右するケースが多い。また、内申点に関係なく学力検査結果によって合格を出すオープン入試もある。オープン入試には特待生選抜を兼ねたものがあり、推薦や一般で合格を留保した上でチャレンジできる場合がある。一方、特待生選抜で一般枠でスライド合格を出すところもある。複数の学科やコースのある私立高校では、受験した学科では合格しなくても別の学科やコースでスライド合格を出すこともある。高校によって違うので情報収集が重要だ。