一般入試は現制度化で最低応募倍率、推薦は増加
コロナ禍後、初の入試となった2021年度入試は前年度までに続き、都立志向が減少し、私立志向が増えた。
2020年12月の校長会志望校調査時点では都立高校第1志望の割合が4年前から71.1%→68.2%→66.9%→65.6%→64.4%と減り続けている。推薦入試は高倍率に対する敬遠傾向から6年連続で減少していたが、新型コロナ感染防止対策で集団討論を中止したことから応募者数は増加に転じた。しかし、一般入試は1 . 4 2倍→1. 4 2 倍→ 1 . 3 8 倍→1.35倍→1.34倍→1.32倍と4年連続して実倍率が緩和した。
人気校では高倍率を維持する一方、定員割れ校も多く、2次募集数は1,138→1,647名→1,443名→1,437名→1,877名と減少から再び増加に転じ、4年連続で3次募集が実施された。
一方、都内私立高校では第一志望者のみ出願できる推薦入試の応募者が約400名増えた前年とほぼ同数を維持した。通信制を希望するケースも増え、都立離れが続いている。
都立希望が減り、私立希望が増え続けている主な理由は以下の3点。
①学費無償化政策で公私間学費格差が縮まった。
②地方創生政策により都内23区内の私立大学が定員の厳格化で難化、大学付属校への期待感が高まった。
③2021年以降の大学入試改革やコロナ禍下でのオンライン授業等による対応力が公立より私立高校にありそうだ、と考える受験生・保護者が増えた。
今後も私立志向増は続くか
都内在住の場合、授業料軽減助成制度が定着してきた。私立高校に通学している年収9 1 0万円未満の世帯では都内私立高校の平均授業料467,000円が軽減される。新型コロナウイルス禍で経済状況の悪化が予想されたが、中3人口が減少しても私立高校では都立ほど応募者を減らしていない。今後もこの傾向は続きそうだ。
2021年度は公立難関高校の難関大学合格実績の上昇が見られたものの、全体的には私立優位のイメージが強い。2021年度から名称が変わった大学入学共通テストでは当初予定されていた大幅な変更は先送りされ、英語検定の導入や記述試験の導入は実現困難という判断までされた。とはいえ、国公立大の二次試験や各私立大の入試では一部導入が進められているため、従来の知識重視から思考力・判断力・表現力を重視しようという動きがなくなったわけではない。このような変化にいち早く対応できる柔軟性が休
校期間の対応等でも発揮された私立への評価が高まっているといえよう。
コロナ禍下での対応の違いによって大学入試でも人気動向の変化が見られた。誰も体験したことのない状況下、安全志向が強まった中、進学実績を伸ばしている私立高校や大学付属校の人気は今後も高まりそうだ。
学力検査、平均点合計は低下
都立高校入試では2016年度からマークシート方式を導入した2016年から5科平均の合計点は3 0 2 . 1点→ 2 9 8 . 1点→ 3 2 3 . 4点→3 0 7 . 5点→307.3点→282.3点と2021年度が最も低かった。
科目別に見ても5科全て前年を下回った。国語が73.9点→69.5点→65.9点→71.0点→81.1点→72.5点で下げ幅が大きかったものの5科では最も高かった。英語は57.8点→68.0点→54.4点→54.7点→54.1点と2年連続でほぼ同じ。数学は56.3点→66.5点→62.3点→61.1点→53.3点と3年連続でダウンした。理科は2年連続でダウン、61.5点→67.1点→53.4点→47.8点で5科中最も低かった。社会は前年の上昇から一転、61.5点→52.7点→57.0点→54.6点と下降した。
2021年度は休校期間の長さに配慮し、出題範囲の削減が実施されたものの全科目で平均点が下がった。合計点でも4年ぶりに300点を切った。範囲が狭まっても問題が易しくなったわけではなかったのだろう。コロナ禍で受験生の学力が低下した可能性もあるが、今年の平均点から次年度以降の問題が多少易しくなることも考えられよう。
今年度に入ってから一斉休校は行われていないため、前年のような出題範囲の削減はなくなる。数学の三平方の定理や英語の関係代名詞も再び出題されるばかりか、新学習指導要領で教科書が厚くなった分、一気に出題範囲は拡大する。新たに出題される部分は限られるので、過去に出題された入試問題で演習するだけでなく、新たに加わった単元についても演習を重ねておく必要があるだろう。
実倍率は緩和しても9千名以上が不合格
都立高校希望者は減ったものの、全ての都立高校の人気が下がっているわけではない。一般入試の不合格者は4年連続で減少したものの9,127名で昨年の10,172名を下回った。定員割れが増加した一方、高い実倍率校に変わりはなく人気の二極化傾向が続いている。全体の平均実倍率が緩和しても、多くの都立高校の実倍率はあまり変わらない可能性が高い。特に難関校・人気校を志望する場合は油断せずにのぞむべきだ。
推薦入試は前年の2.55倍から2.78倍に平均応募倍率が上昇、2年前の2.61倍をも上回る高倍率だった。2022年度も今年度に続き集団討論は実施されない。高倍率への敬遠傾向が強まらなければ応募者数はそう大きく減らないかもしれない。推薦入試では学力検査がなく、面接・集団討論、小論文、内申書で総合的に判断される。今後、総合的に合否を判断する割合が増えそうな大学入試制度と重なる部分が少なくない。経験を積む意味でもチャレンジする価値はあるだろう。