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ムーヴ1号で、今年中学受験を無事終えた黒田学くん(仮名)のお父さんのアドバイスをいただきました。この夏、あらためて黒田さんを編集部にお招きし、前号よりフランクな設定でお話しいただきました。そのときの、ムーヴの編集部員Fとお父さんと歓談?の一部を紹介します。
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中学校受験は父親の存在感を示す絶好のチャンス
[編F] 前号では、お父さんの存在感を保つべき、というお話がありました。つまり、威厳が必要ということでしょうか?
[黒田さん] 春にもお話ししたとおり、威厳とか大黒柱とか、そういう立派な存在は、今の日本では難しいですよね。私の場合は、せめて居間でジャマものにならないという消極的なレベルかもしれません。カツオ君のお父さんの波平さん。三枚目であまり威厳はないですが、存在感はありますよね。あのような自然体な感じで十分では?うちでは、ムリして威厳を示そうとしても、ただのカラ威張りのオヤジと陥り、母子ともに口もきいてくれなくなるかも。
[編F] 私は長年、学習塾の校舎にモソモソと生息していたのですが、生徒と接していても父親の存在感ってぜんぜん感じないのです。土日に催す塾の保護者会でも、出席者の大半はお母さん。進路決定の個別面談でもお父さんが来塾した記憶があまりないですね。夜に大きなRV車でお迎えにくるのもお母さんだったような…。余談ですが、塾の生徒って、ときどき、教師に呼びかけるとき、油断して思わず「お母さん!」って呼ぶのですね。ほほえましいミスなのですが。「お父さん!」っていわないです。
[黒田さん] やっぱり子どもにとってお母さんの存在は絶大ですよ。父親なんて油断すると、なんだかよくわからないけどウチに住みこんでいる親戚のおじさんのような存在ですからね。うちは男児だからよいものの、女の子のご家庭は、もっと厳しい仕打ちにさらされるみたいですね(笑)。
[編F] 母親というのは、もう誰がなんといおうと母親。生まれた瞬間から母であり、これからもずっと母。母子関係は人類でもっとも強いきずな。でも、父親の場合は、積極的に「父親になる」という意識が必要だといわれていますね。
[黒田さん] そこまで大げさに構えなくてもよいとは思いますが、私立中学受験で、そのうえ男児の場合は、母と息子の世界に閉じこもりがちだとは思います。きっと、母子ともに息苦しくなるし、行き止まりに追い込まれる。親離れの時期でもありますからね。そんなとき、心配するな、とーちゃんがいるぞ、といえる存在をめざしました。まあ、そのレベルには達しなかったと思いますが…。ともかく、中学受験のプロセスは、父親の存在感を示す絶好の機会だと思います。
ぜったいにお父さんも学校を見るべし
[編F] 父親は母親に比べ情報が入りにくい、とお話しされていましたが、学校見学はどれくらい足を運びましたか?
[黒田さん] 10校くらいだったと思います。
[編F] お父さんで10校は多いですよね。
[黒田さん] ほんとうはもっと行きたかったのですが…。日程的にそれくらいが限界ですね。
[編F] その10校はどうやって選んだのですか?
[黒田さん] ムーヴの記事を読ませていただくと、「まずはしっかりと家庭の方針を持ちなさい」とか、「男子校か共学かはっきりしなさい」と教えていますが、バタバタと日々追われて生きている小市民の我が家では、そんな高レベルな議論は難しいですよ(笑)。とりあえず、地図を広げて自宅沿線の学校からマークしました。東京の杉並区などに住んでいれば選択肢も広がりますが、我が家は、のどかな田園地帯?ですから。まずは通学圏ということで絞られます。そこで、まずはいろいろ見て、それから考えようと。と、偉そうにいいつつ、実はうちの母親に「あの学校行って、レポートしてちょうだい!」というのが真実です。
[編F] 実際の学校をご覧になってどのように感じましたか?
[黒田さん] やっぱり、実際に見ることは予想以上に価値はあったと思います。どの学校でも感じたことは「学校って変わったよなぁ」ですね。設備にしても授業にしても私の中高時代とは大きく違います。携帯電話機ではないけど、とにかく高機能化したというのが率直な感想です。一種の社会勉強としても見識が広がりました。楽しかったですね。自分の息子の学校以外に見学に行く機会なんて、この時期だけですからね。
[編F] いわゆる各学校のイメージやランキングも変わりましたよね。そこに誤解や戸惑いを持つお父さんも多いようです。お母さん方は常に最新情報で上書きして見る、というより過去のことは忘れているのでしょうか?
[黒田さん] 女性は今を生きていますからね。私の場合は「へぇ、○○中学校って、昔は汗臭い男子校で近寄りがたかったのに、今じゃ、かわいい制服の女の子がいるぞ!」と、シミジミと年月の移ろいを実感しましていました(笑)。やっぱり、オヤジは時代についていかないと。バカにされる元です。とにかく、これから私立学校を志すご家庭のお父さん、ぜったいに今の学校を見ておきましょう!お母さんとは違う見方もできますから、より精密に学校を検証できると思います。
[編F] 女性は、意外に素直というか、コドバは悪いですが洗脳されやすい。学校の先生のお話にも心酔して帰ってきます。
ブランドにも弱いですよね。それはそれでよいのですが、もう少し冷静さがほしい。逆に、お父さんの方は、斜に構えているというか、疑い深いというか、ネガティブですよね。先生方の応対などにも厳しいですからね。
[黒田さん] 学校で説明をおうかがいしても、「そんなエラソーなこと宣言しちゃって大丈夫?」とか、「最寄り駅にいた生徒、態度悪いぞ!」などとあら探ししてしまいますよね。でも、心酔する気持ちも、疑問や不安も、それぞれ正直な感想ですから。それを元に夫婦間で健全な議論となればいいです。でも、「どうして、あなたはいつもネガティブなことばかりいうの!」「おまえこそ、ちょっと先生がスマートだっただけで、学校を評価するな!」なんて争いがち。皆さん、気をつけてください。
[編F] (笑)
我が子をかばう前に、母親をフォローするべし
[黒田さん] 実際の塾の現場ではお父さんはどういう存在なのですか?
[編F] 先に申しましたとおり、あまりお父さんと話したことがなくて…。でも、おっしゃるとおり、お父さんが否定的になってしまうのが弊害だと思います。母子が決めたことを、何でも否定して、代案を出さない。これは最悪です。
[黒田さん] 父親って、中学受験でも、どこか受験戦争に巻き込まれた、という被害者意識みたいな気持ちがあるのかもしれないですね。
[編F] それもあると思います。母親はとにかくすごいパワーで突進します。お父さんがそのパワーについてこない。父母の温度差が激しい。これは、生徒本人に悪影響なのですね。父母のパワーバランスが悪いと、受験生本人に適切な推進力を与えることができないのです。
[黒田さん] そうなんですか。
[編F] ありがちなのが、厳しい母親に対して息子を救う?ために、「あんまりムリするなよ」なんて中途半端に優しく接するお父さん。それが功を奏することもあるのですが、父親と息子で被害者気取りというのは健全ではないですよね。
[黒田さん] うちは、それほど教育ママではなかったし、それほど悲劇的な状況ではなかったです。そういう意味ではうちの母親には感謝しています。逃げるつもりはないのですが、中学受験は母親中心でよいと思うのです。母親は息子が自分の分身だと思っているし、自分の息子はほかの家の息子には負けてほしくないって願っています。「この子は私が立派に育てます!」という気持ちも理解できるし、それこそ頼もしい母親の力の源ですね。だから、基本は母子2名で力を合わせてがんばる、でもいい。父親のテーマは、その2名を、いかに援助するか。
[編F] おっしゃるとおりですね。父母子の3者で一丸となってという構図がいいというわけではないですね。となると、お父さんの役割はクールダウンしてあげることでしょうか?お母さんも一生懸命が過ぎて、疲れてしまうのですね。受験が近くなると、だんだん理性がなくなって、もうワラをもすがる心境に陥ったり、逆に、もうかわいそうだから受験はやめようかしら、と、自己完結的にあきらめの境地に陥ったり。そこを、うまく救ってあげてほしいです。
[黒田さん] それは難しい要求ですね…。息子をかばうというより、むしろ、母親をフォローするということでしょうか?
[編F] そうですね。やっぱり受験は厳しいモノ。中学受験を決めた以上は、本人には、ある程度の試練は要求しないと。極端なスパルタはいけませんし、健康管理や後押しは必要ですが、中途半端に甘やかせてはなりません。受験生本人には常に安定した推進力を与えつづけることは忘れずに。そうしないと墜落します。燃料とエンジンである母親のメインテナンスが第一です。
お父さんが決める
[黒田さん] 今は受験校の決定はほとんど母親が実権を握っているようですね。
[編F] それでよいと思いますよ。でも、あえてお父さんが決めるという役割に参加してほしいとは思います。
[黒田さん] 実際に決めるのは母親でもいいのです。母親の意志は大切にしてあげたいとは思います。その決定事項にしっかりと支持してあげる。何か問題がありそうなときに、さりげなく進路修正してあげる。そういうレベルが理想ですね。
[編F] たとえは悪いですが、デートのとき、男「何が食べたい?」、女「あなたが決めて」という場面。男性が好きなレストランに決めると「わたし、こんなの食べたくない!」となり、「オレに決めろっていったじゃん」となる。レベルの低い男女の争い(笑)
[黒田さん] そうですね(笑)。「あなたが決めて」というのは、「私が満足する選択肢をあなたが判断して」という意味であり、「あなたの好きな場所に従うわ」ではないですからね。
[編F] 学校選びはそのレベルではないですが…
[黒田さん] いやいや、同じかも。つまり、母と子が、自分の希望も満たす学校を決めてあげる。「オレの決めたことについてこい!」というより、「キミたちにはこの選択をオススメする」というニュアンス。決定者というより判断者、というべきでしょうか?
[編F] そのためには、日々の研究やコミュニケーションが欠かせないですね。
[黒田さん] 学校についてしっかりと調査する以上に、息子の実力も冷静に把握することも心がけました。母親は高く見積もりますから。かといって、悲観的な見方よくない。父親だって息子には過大評価したいというのが本音ですし、健全なレベルで期待をかけてあげる、ということは大切なことだと思います。テストの結果も息子が塾に行っているときに時間をかけてじっくり検証しました。
[編F] 黒田さんは、とても冷静で、いいお父さんですよね。学君にとっても奥様にとっても頼もしいですね。
[黒田さん] いえいえ、ムーヴの記事になるというので見栄をはっているだけです(笑)。うちの母親が読んだら怒ると思いますよ。でも、よいお父さんブリのついでに。一番、ダメなお父さんは、母親に任せて非難ばかりすること。「成績が悪いのは、おまえがちゃんと勉強させないからだ!」などと暴れる父親にはなりたくない、それだけは最低限、心がけました。
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収録 平成18年8月 ムーヴ編集部にて
○黒田さん(仮名) 前号から登場していただいているお父さん。今春、息子さんの学君(仮名)が神奈川県の某有名男子校で 学んでいます。ちなみに編集部員F は元進学塾講師。さびしい独身のくせに発言が偉そうですね。鶴亀よりお詫びします。
※黒田さんの発言内の「うちの母親」は学くんのお母さん、つまり奥様です。念のため。
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