|
まことに申し訳ないのだが昨年度に引き続きムーヴに登場する鶴亀です。今年のテーマは「健康子育て受験生」。なんだか語呂を優先したと思われる妙なシリーズタイトルではあるが、ともかく、受験生の心身の健康や、学習指導、受験生家庭の注意事項、などなど、余計なお世話でお話ししたいと思う。たとえ1行でも参考になれば幸いである。
さっそくだが、今号は受験生のおとうちゃん、おかあちゃんのあり方についてお話ししたい。テーマは「ハードボイルド」だ!
■HARD and GENTLE
ムーヴ読者のご家庭の風景を想像してみる。
窓の外を見ると、ちょっとジョニーデップ風のお父さんがノンビリと欧州製のステーションワゴン車を洗っている。その横を、ボストンレッドソックスの帽子をかぶったお子さんが、「いってきま~す!」と、軽やかに模擬テストに出掛けていく。お母さんも、掃除機のスイッチを切って、フフっと微笑(ほほえ)んでしまう。ソファーのネコちゃんが大あくび。少々退屈かもしれないが、幸福にあふれた家庭ではないだろうか。ちなみにマイホームはオール電化か?ガス発電か?
そんな、ポカポカと陽(ひ)だまりの生活でも、お父ちゃんお母ちゃんは緊張感を忘れてはならない。日常から、お子さんの様子を適切な目で観察しなさい。そして、少しでも危機を見つけたら速やかに対処しなさい。
「ギリギリにならないと塾に向かわない」「塾のハナシをしなくなった」。思い当たらないだろうか?取るに足りないことのように思えるかもしれないが、これも重大な危機だ。
明らかな犯罪や事故の話題は除くとしても、子どもたちの成長過程は、数多の危険にさらされている。特にこれから思春期を越えるまで。心身の健康不良は、大地震のように不意に襲う。渦巻いて歩み寄る大嵐のごとくの大艱難(かんなん)もある。子ども時代のトラブルに端を発し、復興不可能な世界の終焉に至る場合もある。いわんや、特殊状況下の受験生は火ダネが多い。これからの夏秋冬と、無事息災、意気軒昂、順風に帆を上げ、流れにさおさし、末は博士か大臣か、と甘く展望しないように願う。
数百年もの間、火事を知らない村の消防隊だって、消防車の整備と隊員の訓練が欠かせないのだ。
さてさて。話題はかなり唐突だが。
お父さんもお母さんも、ハードボイルドなヒーローに憧れたり、恋いこがれたりした記憶はお持ちだろうか。コミックでもシネマでも、冷ややかながら鋭く輝く眼光がハードボイルドキャラクターのポイント。世のダークサイドに生きる彼らは、常に張り詰めた世界を泳いでいるからだ。子育てはそこまで緊迫していないだろうが、お子さんの危機管理のために、彼らに学ぶことは多い。
ハードボイルドのおきて、その1。
ハードボイルドヒーローは、命を狙われる危機的な状況になっても気障な軽口をたたきながら、機転を利かして難を逃れる。お母さんお父さんもそうありたい。たとえ困難な局面でも、「たいした問題じゃないサ」って口笛吹くことが、子どもに安心感を与える。少なくとも模擬テストの成績が少々下がったくらいで、両親そろってショボーンとしたり、おろおろアタフタそわそわオタオタしたりするなかれ。
とにもかくにも、問題を先送りせず、涼しい顔でスポーティーに対応する。その場の瞬発力で解決するように。(解決の基本は、子どもの気持ち、環境、状況など、できる限り正確に把握し「共感」することだろう。あらためてお話ししたい。)
ハードボイルドのおきて、その2。
大都会の私立探偵、無免許の天才外科医、放浪の剣豪。人気のハードボールド系ヒーローは、現実的な法制度のもとでは少々の難あるキャラではあるが基本的には正義の味方だ。冷たくニヒルに突き放しておきながら、なんだかんだと、厚い義理人情で人々を守り助けるというのが、ストーリーの要(というかワンパターン)である。
あくまで教育だし、受験勉強だし、厳しさを要する。受験生本人には適切な推進力を与え続けなくてはならない。そこで、普段は少々厳しく突き放すくらいがよろしい。優しいお父さんを気取り、デレデレしている場合ではない。ただし、ここぞという大ピンチでは力強く助ける。それがハードでじぇんとるというものではないか。「普段は冷たくて厳しいけど、いざというときは助けてくれる。」がハードボイルドの基本である。(え?世には逆が多い?普段優しいのにいざというときに逃げる?)甘いだけのお父さんは、一時的に人気を得ても、将来的は、はじけて消える。子ども本人も「○○中学校に入りたい!」と願っているのだ。成功に導いてくれるたくましい力を求めているのだ。
ちなみに、塾の現場でも、少々やり過ぎでは?とヒヤヒヤするほどの厳しい教師の方に、(受験終了後に)子どもたちが集まっていたと記憶する。
ハードボイルドのおきて、その3。
最近、特に男性(つまり父親)は、なんでも恩を着せたがるらしい。貧乏くさいハナシである。これが対子ども的にも(対女性的にも?)最低な行為とされる。「~してやった」「オレのおかげだろ?」っという意識は、ハードボイルドとはほど遠い。ムーヴをお読みのお母さんは「そう!そう!」って手を打っているだろう。いわんや、我が子に対して「塾に高い月謝払ってやってんだ」なんて叫ぶお父ちゃんに平穏な老後はない。「誰のおかげで私立に行けると思っているんだ!」なんて、もはや裁判沙汰(ざた)である。
仕事を完遂したハードボイルドヒーローは、礼をいわれるのも疎み、静かに去っていく。定番のラストシーンだ。友情や恋愛感情が動機であっても「クライアントのリクエストに応えただけだ。」「高額な報酬目当てでね。」などと悪びれてみせる。それでも、助けられた方は「一生忘れないわ」ってヒーローの後ろ姿を見送るのだ。う~ん、かっこいい。むろん、親が、荒野に去るわけにいかんが、この姿勢は受験生の親として、実はけっこう重要なポイントだと思う。(ただし、これは、親子関係においてあたりまえのことをいっているだけなのだが・・・。少なくとも親は子どもになすことは無償であるべきだ。ですよね?)
これまでは、特にお父さん向けの内容だが、以下は、お母さんにもかかわる内容だ。
■INTELLIGENT
お母さんのアフタヌーンティー談義。ご立派な新聞社がキオスクに並べる週刊誌の記事。さまざま受験や学校情報が飛び交う。そんなもの(失礼!)にいちいち過剰に反応しないように。飛び交う情報には真実有益な内容も多いだろうが、ご自分で調べて、見て、感じて、そして確信できた情報のみを頼りにしなさい。私(鶴亀)のたわ言に感心する必要もない。(してないか。。。)ムーヴの掲載情報についてもしかり。
情報に振り回されるお母ちゃんは、受け身がすぎるのだ。情報は飛んでくるのではなく、情報はニーズに応じて探し求めるものだ。自ら積極的な姿勢で研究すれば、まわりの噂に翻弄(ほんろう)されることもない。なによりも、自分(お子さん)の成長にとって有益な情報(「都合のよい情報)ではない)だけを取捨選択するように。そのためには、シッカリとした判断力が求められるだろう。ハードボイルドはインテリなのだ。
追:最近は情報に寄りすがるパターンも多いようだ。つまり、お子さんやご自分に都合のよい情報を探し求めている。一種の依存症ともいる。お気持ちはわかるが、深入りすると心の病が進行する。一度、深呼吸して青空を見上げてほしい。
さてさて。世を惑わす情報は受験情報だけではない。
ワイドショー的な情報。それはそれで有意義なモノもあるが、ムヤミヤタラに妄信せず、ご家庭のスタイルを通しなさい。突然、算数の点がよくなる食事なんてない。食事の要はバランスとリズムとあたたかい食卓ではないか。子どもの脳は疲れるくらいクルクルと活性化しているから、神経質なパズルで脳を使うくらいなら、ゆっくり休んだ方がいい。関係業界の皆さんは悪いが。それらがムダ、ウソといっているのではなく、「お昼のテレビで紹介されていたから」とか、あれこれ影響を受けやすい姿は、お子さんからはあまり印象わるい!といいたいのだ。マワリに踊らされず泰然自若としている親の理知的な姿勢は、受験生本人の心身の安定にもつながるのだ。
■MYSTERIOUS
ハードボイルドな生活は、基本的に孤独である。さらに寡黙である。
学生時代の仲間とベタベタと飲み歩いて、愚痴(仕事→妻→子ども→格差社会)+メタボリック自慢、とリピートおやじは、ハードボイルドの対極にある。
さて、実生活において社交的で話題が豊富なのは、なによりではあるが、受験に関しては孤独を貫いた方がよい。
基本的には秘密主義をオススメする。我が子が、塾で一番になりました!って世に流布させても、世界中の誰ひとりとして救われない。お子さんが私立中学校を受験するのはお父さんやお母さんの人生のためではない。親がはしゃぎすぎると、「オイラ、お母さんの自慢のために勉強させられているのかな?」としらけてしまう。「娘の成績以外に生きがいはないのかしら、あの男(父親のだゾ)!」って、メタボリックよりも脳の老化よりも恐ろしい病状と発展するリスクもあるので用心してほしい。
さらに、他人の生活もどうでもよい。(お父さんの上司の」Aさん息子さんがいかに優秀だろうが、まったく無関係。気にすべきですらない。「ふ~ん、エラいわねぇ。Aさんの性格が遺伝しなきゃいいわねぇ。」とナマ返事しておけばよいだろう。
小学校高学年段階は想像以上に自我が発達している。他人と比べられるのは、ポジティブ/ネガティブどちらも、よい結果を生まない。そんなことは、強調しなくとも十分に把握しているのだ。塾では厳しい競争にさらされているうえに、家庭での「お姉ちゃんは何の苦労もなかったのにね」ふとしたヒトコトが、悲劇を招く!これは毎年「ムーヴ」でしつこくに繰り返すが、多くの悲劇を見てきた教室時代の苦い経験で申し上げているので、頼むから、やめてほしい。
「他人は気にせず、自分の満足を目指しなさい!」という教育がハードボイルドだ。塾で1番になったら、ほめてあげてほしいが、「で、次は何を目指すの?」「次、2番だったらどうするの?」といった意識がハードボイルドといえるだろう。
■STYLISH
最後に。映画や小説の世界のハードボイルドヒーローは、世を捨てたかのごとくの生活ではあるが、実はみんなオシャレでスマートである。独身男性が多いが、生活もちゃんとしている。
特にお父さんは、まずは外見や生活を整えることも大事だ。油断だらけのだらしない中年ではハードボイルドな受験生パパにはなれない。
何も教えているわけでもないのに、お子さんが「勝手に両親のマネをして」成長している。これは理想である。「勉強しなさい!」「部屋片付けなさい!」ではない。まずは、お父さんお母さんがスタイリッシュなお手本を見せることだろう。
以上、とりあえず自分のことは棚に上げて。鶴亀算太郎。
2007年度 ムーヴ1号 掲載記事
|