|
=========================================================
6年生のご家庭にとっては、受験校を現実的に決める時期が迫ってきました。「絶対にこの学校に通う!もう決めた!」という学校と出会い、さらに、十分な学力が伴っている、なんて、幸福な受験生は、実は数少ないと思います。読者の皆さんも、シビアな選択に悩みは絶えないのでは?そうして、入試日程表と模試結果を前に途方に暮れていませんか?これまで、なんとなく夢見ていたけど、いざリアルに決めようとすると、思わぬ日程の不整合に啞然(あぜん)とすることもあります。発表や手続きの時間もさまざまですからね。同じ学校でも入試回によって入試傾向が違うこともあります。なによりも、受験生本人の実力の見定めも難しいし・・・。
今回は、出願校を決めるにあたっての基本的な姿勢について、「ムーヴ」からのアドバイスです。特に初めて中学受験に挑むご家庭のために、基本事項からお話しします。
=========================================================
■まず、第1志望校を決めること。だけど・・・。
第1志望校が決まっていないのであれば、まずは、第1志望探しに専念しましょう。第1志望を保留にして、組み合わせ全体で考えないように。統一性や安定性に欠ける併願パターンに陥る危険があるからです。
第1志望校とは、「学校説明会に一度は足を運び」「その教育理念から教育プログラムに理解賛同し」「受験生本人も納得し」「学力的に合格可能性が高い」が必須条件です。(ほか、通学や費用の観点もお忘れなく。)
さて、ムーヴの各記事を参考にしていただき、理想的な第1志望決定を願っていますが、ここでは、少々現実的なお話をしておきましょう。最大の問題は、明確な第1志望がありながら、実力的に届かない場合ですよね?
可能性を求めて受験した方がよいか?ぜひ、果敢に挑戦してください!よほどの場合を除いて挑戦することで非難されません。しかしながら、気丈な覚悟は固めること。なお、「ダメでモトモト」となどいわないように。これは「気持ちの準備」のように聞こえますが、逆効果です。「ダメモト」といっても、受験生やご家庭は、「受かるかも」という期待心理が強く働いています。失敗したときは「受験校選びに間違えがあった」という後悔が残りやすく、「やっぱりダメだった」と、ダメージをより強い形で再認識してしまいます。自信を持って受けた生徒が失敗したときよりも、ショックが大きいともいわれているのですね。チャレンジパターンで臨むなら、そのことは念頭に。受験するのであれば、ぜったいに合格するぞ!というモチベーションは保ちましょう。
第1志望校を変更する場合。実は、チャレンジパターン以上の配慮を要します。とにかく、受験生本人としっかりと話し合って決めてください。お母さまと塾の先生だけの密室で決定しないこと。そして、絶対に「妥協」「ランクダウン」というニュアンスを強めてはダメです!お母さんの方がガッカリ姿勢に陥りやすいので注意しましょう。諦(あきら)めるのではなく、心機一転、第1志望を選び直しただけなのですから。
■「併願校」を選ぶための正しい姿勢
現在、多くの学校では前日や当日に出願できますから、併願出願も直前の判断でも間に合います。とはいえ、年内中には、ある程度のビジョンを固めておきましょう。
「第1志望校がほぼ確実。念のため用意しておく。」程度であれば、それほど神経質な判断は要しませんが、現実的には、「第1志望に不安が残る」「第1志望は挑戦」という受験生も多いのでは?ということは、第2志望以下の併願校に入学する可能性も高いということです。ゆえ、併願校であっても、基本スピリットは第1志望校選びと同じです。「合格できる学校を探す」のではなく、まず、「通いたい学校」から考えるようにしましょう。特に受験が近くなり、リアルな判断を強いられるようになると、「ランキング表」とにらめっこ状態。「ここがダメなら、ここ」と短絡的な判断に陥りがち。また、見栄(みえ)が優先して、学校内容よりブランド力に惑わされます。しっかりとした姿勢は保ってください。
今回の巻頭記事でも紹介していますが、私立学校には個性(あるいは「癖」)があります。「ムーヴ」をお読みの志の高いご家庭では、「私立だったらどこでもいいのよ!」なんてことはないはずですね。無限にあるような受験校の組み合わせでも、学校選びに対する毅然(きぜん)とした姿勢があれば、実は選択肢はおのずと絞られます。何の基準もなく偏差値ランキングだけで決めるから、パズルのように陥り、弊害ばかりが、わき出ます。(後述していますが)ご家庭の学校選びの方針が明確であれば、併願校でも、第1志望校と校風や教育内容が近い学校になるはずです。)受験校の組み合わせで迷うご家庭は、この姿勢が欠けていることが多いようです。
たとえば、第1志望校の要素(魅力)を見ながら学校に求めるもの(絶対、はずせない要素)を、10項目程度リストアップしてください。具体的なものから理念的なものまで、ランダムでかまいません。そして、それを基準として、別の学校を探すという方法はいかがでしょうか。
「通いたい学校」とはいえ、やはり併願校は入試における「安全対策」という観点は忘れないように。挑戦校を並べて「○○中学と△△中学のどちらか受かった方」という作戦は危険がいっぱい。特に難関上位校狙い層に多いようです。出願校の入試の難易度が同じというパターン。実力相応であれば問題ありませんが、どれも「挑戦圏」の場合、全滅で終わる可能性もあります。「ダメなら公立」という言葉もよく聞きますが、ほんとうにそう考えているのですか?これまで、夏も冬も受験勉強にあけくれたのに最後にはどこにも受からなかったという経験は、その場ではそれほど問題がないように見ても、トラウマとして心の中に根深く残るといわれています。12歳は反抗期・思春期前夜の段階です。くれぐれも安易に考えないようにしてください。「全滅は避ける」は鉄則です。
千葉や埼玉ではお正月明けから入試が始まります。人気校もスケジュールも重ならないことが多く魅力的です。そこで、東京神奈川の学校を第1志望にして、特に興味もないのに「場慣れ」と称して他県校を受験する習慣があるようです。これも安易に考えないようにしましょう。「場慣れ」という意識で失敗したら、想像以上の大きなダメージとなります。たとえ併願校であっても真剣な心持ちで臨んでください。そもそも、受験生本人が「ここは滑り止めだからさぁ」「練習だからネ」などという甘い気分で受験する姿勢自体が、不健全です。
大切なことは、「偏差値の高い学校に合格すること」ではなくて「子どもが健やかに成長すること」。忘れないようにしましょう。
最近は一部の学校(いわゆる超難関校ですね)以外は、複数回入試があたりまえになってきました。親切なようで、それが皆さんの悩みを増幅させているのですね。つまり同じ学校が併願校となるパターンがあるからです。「2回目がカンタン」とか「3回出すと『考慮』される」などとウワサが出回りやすいので注意してください。(もちろん、真実の場合もあります。)悩む前に、ずばり受験校に相談しましょう。確認するべきことは、「回数による入試の違い(募集人数・テストの教科やレベル)」「複数回出願での有利点」など。あくまで入試なので、ヒント程度の回答しか得られないかもしれませんが、それでも、直接お話ししていただくことをお勧めします。(もちろん、受験生家庭としてのマナーは前提です。厚かましく質問しないように!)
■似た学校を並べるパターンが理想
お話ししたとおり、ご家庭の方針がしっかりしていれば、自然に似たタイプの学校が並ぶはずです。たとえば、男子校・女子校と共学校では、教育の根本的な部分に違いが多い。ですから、男子校・女子校を志望する場合は、併願校も男子校・女子校であることが自然です。そして、校風や通学距離、教育プログラムなどにおいて、近似した学校を選べばよいと思います。特に男子校は数少ないため、併願パターンもかぎられると思います。ただし、男子校志向のご家庭は注意が必要ですね。いわゆる人気難関校が多いので、「ブランド」や「偏差値」に固執してしまう傾向があるからです。各校、学習指導手法や設備にも差はあります。よく併願される上位校パターンでも「実は雰囲気がずいぶん違うんだけどなあ」と思われるものがあるのですね・・・。慎重に。
建学バックグラウンドは雰囲気としても生きているのですね。ミッション校女子校は、共通のムードを持っていますし、家政系建学の女子校も共通ムードがあるように感じます。やはり、学校に何を求めるかにもよりますが、まずは、共通バックグラウンド校から探す方が賢明でしょう。(ちなみに、カトリック校とプロテスタント校も、ムードが異なります。)
ちなみに、付属校は、付属校というフォーマット自体で「似ている」とはいえません。早稲田や慶応の附属(系列)を除けば、大学付属校併設校は「進学校」化している学校が多く、「エスカレーター式」という概念は死語になりつつあります。付属校と、そうではない学校との組み合わせは、それほど違和感はないと思います。多くの付属校は、大学まで決まってしまうわけではありませんが、大学のカラーは中高にも映し出されている場合が多いので、大学の建学理念などは目を通しておきましょう。
さらに、入試問題のスタイルや傾向が類似する学校を並べる、という高度な技もあります。中学入試の問題は学校によって個性があります。必ずしも毎週日曜日に受験する模試の実力がそのまま本番の結果に反映するとはかぎりません。その学校に合格する力、つまり「傾向と対策」への取り組みが道を広げることがあります。ゆえ、出願校を傾向出題が近い学校で統一すれば効率的です。
ただし、これは「極端に傾向が違う学校を並べると効率が悪いかも」程度であり、まずは学校の教育を軸に選びましょう。また、「傾向と対策」については、必ず信頼できるトッププロ(多くは塾の先生)のアドバイスに従ってください。「傾向と対策」に重点をおくということは「偏った学習」という側面も持つので注意が必要です。
ムーヴ2007年3号掲載記事より抜粋
|