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さて、6年生の諸君は入試も直前。でも、ラストスパートだ!クライマックスだ!と叫ばれても・・・、というご家庭に贈るささやかなアドバイス。
■飛躍より失速防止を!
私はもともと学習塾で、「最後までがんばれ!」と叫んでいた人間。なのに、こんな発言もたいへん気が引けるのだが。
ずばり、これから冬にかけて「ごぼう抜き」は期待できない。(春夏は期待できる。5年生以下のご家庭のために補足。)ここが勝負!と最後の坂道でスパートをかけても、後ろも着いてくるし前は逃げるし、息が切れるばかりで順位が変わらない・・・。中には13ゲーム差を逆転するかのような子もいるが、それは、春夏に仮病や手抜きで怠けていただけ。最後に地力を発揮しているだけ。ラストスパートごぼう抜き!とはちょっと違う。
私の塾講師時代には合格発表の日、「え?ホンマカイナ?」なマグレ当たり(失礼だが・・)な思い出も残るが、あくまで大勢(たいせい)としては、体育の日以降は順当な流れだったと思う。レジェンドとかドラマとか、そんな大仰な事件はあんまり思い浮かばない。むしろ、逆。最後の「あわわわわ・・・」の失速の方がトラウマ的に残る。教師としても自責の念が蘇(よみがえ)る。
タイガースファンの愚痴?はともかく、本題。つまりつまり、これからは大逆転より失速防止をテーマに備えてほしいのだ。誤解のなきように申し上げるが、もちろん、最後まで逆転を信じたい。でも、「現状維持で十分」くらいの気持ちの方が理性的な行動に至るし、余裕が生まれる。おわかりいただけるだろうか?
これまでは、なんとなく「きっと、がんばればなんとかなる」「テストが悪いのはタマタマ」と慰め、判断を保留していたしょう?それが、最後の局面でようやく我に気づく。アタフタ慌ててしまう。ションボリ沈んでしまう。そうこうしているうちに、やがてエンジンが止まり失速する。ちなみに最先端のハイテク航空機だって、ある程度以下に失速すると折り紙飛行機のように地に落ちる。
伸び悩みの子は身の程を知ろう!などと諭(さと)すつもりはない。順風満帆だぜ!な子も油断は禁物。まず、今すぐ、学力・体力・精神状態を、冷静に、謙虚に、客観的に、科学的に、見極めてほしいのだ。そして、今すぐ判断を下し、この時期に効果的な対策を施してほしい。故障を隠してまで走りきろうと意気込まないように。小さなほころびを見逃さず修復する方が優先だ。失速の要素を、スープのあく取りのように丁寧に取り除く。精神面、体力面はより慎重で繊細な対処を願う。
ちなみに、学力については、毎週の模試も最悪結果が真の実力だと捉(とら)えるべきだろう。夏以降、「判定80%!」のテストを宝物のように奉じているかもしれないが、「あなた、何これ!」と最も酷(ひど)かったテストの答案を引き出して精密検査してほしい。重症の方が病巣は見えやすいはず。処方もわかりやすいはず。体温計が38.5度に上れば、これはタイヘン!と病院に駆け込むでしょう?注射したら1日で直るかもしれない。ちょっと熱っぽいな、でも36.9度だしな、なんとかがんばろうかな?なんていうダラダラとした曖昧(あいまい)姿勢が手遅れを招く。肝心な場面でバタっと倒れてしまうのだ。
直すことは直す。諦(あきら)めるものは諦(あきら)めて別の道に最善を尽くす。そういうメリハリある判断と行動こそが失速を防ぐ。
■傾向と対策って何?
中学入試の問題は学校によって個性が香る。毎週日曜日の模擬試験とも違う。模試の算数で80点の生徒がA校の問題では30点。そんなのは、ふつーなこと。そこで「傾向と対策」は必須だ。鶴亀が叫ぶまでもないだろう。
ただし、実は傾向が明確な学校は意外に少ない。塾教材の例題クラスのオーソドックスな問題を並べている学校も多いのだ。そのような学校であれば、それほどヒステリックに対策!対策!と慌てなくても、日々の基礎練習でも十分な対策だろう。もちろん、主に上位校で、明らかに入試問題に主張が濃い学校は入念に備えておこう。いずれにせよ、判断は素人では難しい。プロフェッショナルな指導者の判断に従ってほしい。
小手先の「傾向と対策」が慰めのように陥っていないだろうか。そもそも傾向とは何?対策って何?
傾向と対策というと、出題分野・出題のクセなどなど、問題そのものの話題が先立つ。でも、それは各塾の先生方にお任せしておこう。私は、実は時間のトレーニングこそが傾向対策のイノチだと主張しておく。
入試には時間制限がある。つまり、理解/不理解に加えて、制限時間内に処理する能力が必要だ。50分のテストで50点だった子に、あと10分与えれば80点かもしれないのだ。10分が合否を分ける。極端なようだが、それが競争試験のリアリティ。模試でイマイチな場合も、知識そのものの欠落のように考えがちだが、実は制限時間が障壁になっている可能性も忘れずに。「うちの子は本番に弱いんです・・・」と、日ごろの理解力と比してテストの得点が低い印象の子は、まさにそうかも。時間を十分に与え、最良の条件を与えて解かせて、真の理解力を試す。本人とのカウンセリングで性格や心理状態を探る。実力派の指導者はそうして、その生徒の真の弱点を見抜いてから「傾向と対策」に挑むのだ。
もし、制限時間がネックとなっていると判明したらどうするか?残念ながら、ドリル的なフィジカルなトレーニングを重ねても、処理速度はインスタントには伸びない。教科知識以外に、性格・生活習慣など学力以外の要素も関(かか)わっているから。そこで、対策のポイントは「時間の上手な使い方」。しばしば、「問題が配られたら、時間配分を考えましょう!」などという指導を聞くが、「それができるんだったら苦労しないぞ!」だろう。そんな漠然とした指導はNG。それを実現するための指南が必要。この問題は10分、ここは5分で無理なら断念、と、過去問を指さし教えてあげるのもよいだろう。65点で合格できるのだからこの問題は捨ててもいいよ、という処世術?も授けるTPOだってある。不健全のようだが、その子の得意不得意に合わせた指導も助けとなる。傾向と対策はテストそのものに対してという観点だけではなく、その子の「傾向」に即したアドバイスこそが功を奏するのだ。
「この学校は、ここが出やすいよ~」と得意げに教えているだけの教師もいる。でも、それってただの「ヤマはり」じゃないのか?な~んか無責任。私としては、傾向分野の知識を与えるよりも、現実的な処理方法を強化した方が実効アリだと思う。
たとえば、問題用紙の余白の使い方も教えてあげる。余白がどこにどれくらいあって、問題を解くのにこれだけの計算が必要だから・・・、とあらかじめ知っているだけでも違う。国語だって長文を読む時間をあらかじめ知っておくだけでも、かなり気分が違う。なんというか、イメージトレーニングに近いかな?
さてさて、傾向と対策の要は「過去問」。この扱いがイイカゲンに陥っていないか?過去問指導は塾や家庭教師に任せた方がよいだろう。家庭では難しいが原則はお伝えしておこう。受け持ちの教師を検証する?参考までに。
・本番と近い環境で扱うこと
実際の制限時間イッパイ使う。早く終わっても見直しさせる。もちろん制限時間が過ぎたら終了。それなりの緊張感のなかで解かせるべし。過去問は「できた/できない」をすぐに知りたいと思うが、まずは、1問ずつ解答を確認するようなスタイルでは問題も見えにくい。
・過去問はできるかぎり本物を使用すること
前述の通り、問題用紙や解答用紙の「見かけ」を知っておくと、何かと助けとなる。問題は何ページか、余白はどれくらいあるのか、といったこと。これが得点に大きく関(かか)わるからだ。最近は説明会などで過去入試の実物を配布している学校も多い。ぜひ、問い合わせてほしい。
・得点だけで判断しない
過去問の得点だけで、ウキウキしたり、ベソベソしたり、安易に結論を下さぬよう。過去問はあくまで練習であり対策のための資料。分析は冷静なプロに任せよう。希望的観測は絶対にやめよう。
■もう時間はない!
日本人が陥りやすいのが精神論。根性でなんとかなると勘違いする。たくましい精神力は頼もしいが、やっぱり科学的な手法で学ぼう。寒中、滝に打たれる修行みたいな学習はやめよう。受験生本人は自分の実力を冷静に知っている。学習塾で日々戦っている。過度のプレッシャーとストレスで、直前期に心身を壊してしまっては最悪の結末。ゆえ、体力的にキツい手法は賢明な判断を。息継ぎせずに緊張感を長期間継続するような学習は避けた方がよいだろう。
もう時間はない。難題を前に、時間を費やしてじっくりと悩む時間はない。理科や社会について資料を集めて調べ学習の段階でもない。急に読書したって国語力なんて上がらないって!悩む子どもを、長時間、放置するようなシチュエーションは避けてほしい。塾の自習時間にダラダラと取り残されていないだろうか。ちょっと探っておこう。
テンポを保つ学習がベター。1問解く、すぐにチェック。(前述の通り過去問はこの方法はダメ。)もし知識が欠落していたら、その場で伝授。計算ミスも厳しく矯正する。とにかく瞬間瞬間を大切に、タイムリーな対策を施そう。問題点はその場で即解決。もう、明日はないのだ。今日できることは今すぐやるのだ。
とにかく、目先の実(じつ)をとる学習を心がけてほしい。入試なんて点取りゲームでしょう!と開き直るくらいの子が強い。暗記物であれば、少々無理強いする。10分で覚えろ!と命じる。オヤジギャグな語呂合わせも許す。
妙な神頼みや縁起担ぎもやめておこう。頭がよくなる食事なんてないし。(ですよね?)心のこもった温かいスープの方が幸せでしょう?ご家庭の信仰心を干渉するつもりはないが、なんというか、そういう神頼み的なムードがかえって追い込んでしまうからだ。安心感は神々ではなくて親が与えてあげるもの。気休めに天神さんに軽くお参りするくらいで十分だ。ただし、本来、天神は稲妻で京の都を攻撃するおっかない怨霊(おんりょう)神なので祟(たた)られないように。(笑)
なにより、直前期は心身の健康の維持。それに尽きる。どんな場面でも、常に心身の健康を優先していれば、将来必ず幸せに育つ。皆の、健闘を祈る!
ムーヴでの私の記事に対して相反するご意見をお持ちの保護者の方や学習塾の先生方もいらっしゃるだろう。あくまでツルカメの意見であり、世を否定するような姿勢ではないのでお許しいただきたい。受験生はこれまでお通いの塾の先生に従っていただくのが基本だと思う。特に「傾向と対策」の扱いは各塾の方針やノウハウによるので、よくご相談を。平成20年10月 鶴亀算太郎
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